俺が千反田と一緒になってから三ヶ月が過ぎた。当初は鉄吾さんも家を継がなくても良い。と言っていたものの、俺が婿入りでも構わないと考えていることや、えるが農学の道に進み博士号まで取得した事などから当初の考えを改めた。
「いや、本音ではそりゃ、えるに継いで貰いたいと思っていても、今どき婿入りする人物なぞ居ない。来るのは能力の低い者かウチの財産目当ての者と相場が決まっている。だから自由にしても良いと言ったんだよ。でも、まさか奉太郎君みたいな人物がえると同級生で、しかもお互いが想い合っていたなんて思わなかった」
そんな経緯があって俺は折木奉太郎から千反田奉太郎と姓を改めた。だがこれは俺が思っていたより大変な事だった。と言うのも俺は鉄吾さんの後継者となった訳で、それならば、将来は鉄吾さんに変わってこの千反田を動かさなけれなならない訳だ。
物事の順序としては最初は顔繋ぎが重要になる。俺が新しい後継者として、神山の有力者達と会って覚えて貰う事が重要となるのだ。これが意外と大変で、俺は連日夜になると、アチコチの会合に引っ張り出さられて呑まされた。帰るのは深夜近くとなる。
翌日は五時起きで、日中一杯本業の農業のことを学ぶのだ。夕方終わって一風呂浴びれば夕方から始まる会合に顔を出す訳だ。
こんな生活を三ヶ月も続けていたら、体が持つ訳がない。当然夜のお仕事はお休みとなる。というより、そんな気が起きない。
深夜近くなら夫婦二人でお風呂に入り、アンなことやコンなことをするとは思うが、風呂は昼の仕事が終わるとすぐに一人で入る。妻のえるとは別々なのだ。
当然、えるの欲求が高まって来るが、なんせこちらも人間だ。そうは行かない。結婚当初の数日は本当に朝から夜まで頑張った。それがマズかったらしく、えるは、それが夫婦として、当たり前だと勘違いしてしまったみたいなのだ。
「今夜もお疲れですか?」
枕元に淡い色のスタンドの灯りを燈して悩ましげに、そして寂しげに語りかけるのだが、何せ体が持たない
「明日な。明日なら……」
そう言って布団を被るのだった。
そうして三ヶ月が過ぎてしまったのだ。
やっと会合も少なくなって来た二月の中頃に、農協のバスツアーが行われることになった。千反田からは鉄吾夫婦とお婆さんも参加することになった。
二泊三日の温泉旅行だ。これは農閑期を利用して毎年この時期に行われているらしい。例年なら俺たち若夫婦も参加するそうだが、今年はそうは行かなかった。と言うのも、ウチの畑ではえるが作った新しい小麦の試験栽培をしているのだ。これは俺とえるが進める事業だから人任せにする訳にも行かない。結局、俺たち二人は残ることになった。
だが、それほど仕事は無いのだ。精々が試験栽培をしている畑を見回る事ぐらいだ。それも早朝に終わってしまう。
バスを見送って家に帰って来る
「おお寒い。家の中は暖房が効いていて温かいな」
家の中はエアコンを始め、ガス温風ヒーターや色々な暖房があり、かなり温かい。それにしても温か過ぎないか? コートを脱ぎ、上着も脱いてセーター一枚になる。それでも汗が出るぐらいだ。
「おい、何だか暑すぎないか」
キッチンに居るはずのえるに声を掛ける。
「そうですが。暑ければ脱げば良いと思います。私は脱ぎましたよ」
「それはそうだが、脱いでも暑いと思わないか?」
「それは脱ぎ方が足らないと思います」
そう言ってキッチンから出て来たえるの姿を見て驚いた。素っ裸……いや、正確には自分の腰の前の部分を小さなエプロンで隠している。それだけなのだ。豊かで形の良い胸や艶めかしいウエストも全て露出している。
「ほら後ろもですよ」
そう言ってクルっと回れば豊かな胸がぷるんと揺れる。そして形の良い二つのお尻が丸出しだ。その尻の上にエプロンの紐が結んである。あれを外したいと考えてしまった。
「おい、朝からなんて格好してるんだ」
そうは口から出たが、この姿をもっと楽しみたい、という思いもあった。
「いいじゃ無いですか。今日明日は二人だけです。地域の人も皆旅行に行っています。誰も来ません。来ても居留守すれば良いです。もう三月も何も無いんですよ。わたしもう……」
「それでそんな格好をしたのか?」
「実は摩耶花さんに相談したのです。摩耶花さん夫婦はマンネリになると、摩耶花さんが色々な格好をして福部さんを誘うのだそうです」
「あいつら、そんな事やっているのか」
「元々は沙也加ちゃんが生まれてから、回数が減ってしまったので摩耶花さんがこの格好をしたのだそうです。そうしたら授乳中だったので摩耶花さん、お乳が張っていて物凄く巨乳になっていたので福部さんが喜んだのだそうです。それがヤミツキになったとか。だからわたしが相談したら、是非やって見た方が良いとアドバイスしてくれたのです」
あいつらも、それなりにやってるのだと思った。確かに今日と明日は二人だけで邪魔をする者は居ない。そう考えを改めて、俺は目の前にある豊かな膨らみに手を伸ばす。
「ああんエッチです」
「どっちがエッチなんだ」
「奉太郎さんです」
「どうしてだ?」
「だって、わたしは裸同然ですが奉太郎さんはセーターとズボンを履いています。わたしと同じ格好をしてください。そうなれば対等です」
変な理屈だが確かに俺がここで服を着ている必要は無い。俺は素裸になると、えるを押し倒す。そして両足を広げてエプロンを捲る。そこは既に外から見ても判る程濡れていた。
「何だもうグショグショじゃないか」
「だって、朝のお日様の明るい内から、こんな格好をして夫とはいえ人に見詰められて、恥ずかしくて、恥ずかしくて……摩耶花さんが『ヤミツキになる』と言った事がわかります」
その泉に舌を這わすと泉の主は喜びの声をあげた。
「ああん、本当に久しぶりです」
俺の何かに火が点いた感じだった。シックスナインの形になるとお互いの口で愛し合う。しばらくその状態だったが、やがて
「もう……お願いします」
哀願されるまでもなかった。己の硬くなったものを溢れる泉に挿入した。そして果てるまで求め合ったのだった。
正直言うと俺は、えるのその格好が気に入ってしまい。その日一日、更に翌日もエプロン一枚にさせた。そして何をする時にも傍に居させて、えるの豊かな躰の感触を楽しんで、お互いが求め合えば応じあったのだった。
三日目は夕刻に皆が帰って来るので、朝から二人で家の掃除をした。昼頃までには終わって、素知らぬ顔で出迎えたのだった。
その夜、自分達の部屋に下がると、えるが
「わたし、ヤミツキになりそうです。今度はどんな格好しようか今から考えておきます」
そう言って妖艶な笑みを浮かべた。俺も
「里志達はどんな事やってるか訊いてみるか?」
そう返すと
「二人目が欲しいと言ってましたから、きっと凄い事やってると思います」
そんな返事が来た。俺はえるを抱きしめキスをすると
「あんなに沢山したのに、今夜もですか?」
そう言って少し驚くので
「嫌かい?」
そう尋ねると
「いいえ。今夜はどんな……」
「何も身に着けないこと」
そう言ってえるの衣服を脱がせた。
<了>