第20話 「サツキの依頼」
2学期が既に始まっていた。
鈴和は康子と美樹と3人でファミレスでパフェを学校の帰りに食べていた。
「あんた達、学祭の準備とかしなくて良いの?」
美樹が半分呆れながら言う。なぜならもう3日も続けて、学校帰りにここに寄っているのだからだ。
「大丈夫!私ら1年なんて当日の案内役だけだから。むしろ資料作りの邪魔になるって」
康子がそう言いながら大きめにカットされた苺を口の中に入れた。
鈴和は何故か、外の様子を気にしている。
やがて、その顔が明るくなった。
そして手をあげて振る。
美樹はその鈴和の視線の先を見て驚いた。
「あ、浅野さん!?」
そう、鈴和が待っていたのは、浅野さんことサツキだった。
サツキは表から三人の姿を見つけると、中に入って来た。
「御免なさい。HRが終わらなくて」
そう言って空いてる席に腰掛けて、驚いて口をパクパクしている美樹に向かって
「美樹、今まで色々と御免ね。私今度鈴和達の組織の一員になったの。それで同じ高校じゃ不味いと言う事で隣の西校に転入したんだ。それで名前は、浅野サツキ。宜しくね」
そう一気に言い切ってしまった。
「あ、ああそうなんだ……ちっとも知らなかったから……」
未だ動揺が隠せない美樹は返事もしどろもどろである。
「本当に御免ね。だからこれからも仲良くしてね」
そう言って右手を指しだした。
美樹も右手を出して仲よく握手をする。
「あたしも苺パフェで」
サツキも同じものを注文をする。
「驚いたでしょう美樹、浅野さん私らの仲間になったんだよ」
そう嬉しそうに言うのは康子だ。
「ちょっと康子、あんた組織に入って無いでしょう!?」
そう窘める鈴和に康子は
「そう硬い事言わないの!」
そう言って笑ってる。
美樹は、やっと事情が飲み込めた様で
「そうかぁ西高か、隣なら年中会えるね」
そう言って赤外線でアドレスを交換した。
暫くは馬鹿な話で盛りがっていたが、やがて鈴和が
「サツキ、何か用事があったんじゃ無いの?」
そう聴くと、サツキは座り心地の悪い顔をして
「うん、実は協力して欲しい事があって、ここに来たんだ」
そうサツキが言うと鈴和は
「だと思った。一昨日と昨日はその事で来れなかったんでしょう?」
そう訊くとサツキは嬉しそうな顔をして
「そうなんだ。本当は一昨日あたりに頼もうと思っていたのだけれどね」
運ばれて来た苺パフェを口に運びながらサツキは話始めた……
「実はね、あたしが今度編入した西高だけど、どうも変なサークルがあるんだ」
「変なサークル?」
三人が同時に訊き返すとサツキは
「うん、表向きは『現代経済研究会』とか固そうな名前なんだけど、どうも怪しいのよね」
「どう怪しいの?」
鈴和が訊き返すとサツキは
「これは、あたしの感なんだけど、恐らく売春組織だと思うの!」
「ば・い・しゅ・ん?」
あまりの事に三人の口調が同じになってしまった。
「まあ、あたしの感なんだけど、同じ女として、その会に入っている娘達がなんか変なんだよね。よしんば売春でなくても、なんか非合法な事をやるサークルだと思うんだよね」
そう言うサツキの言葉に鈴和は
「じゃあ、前のヒロポンとか」
「それは無い。あの学校にはやらなかったから」
そうハッキリとサツキが言うので鈴和は
「じゃあ、調べて、売春だったら組織に連絡する、と言う事でどう?」
そう言ったのだが、美樹と康子は
「調べるって、わたし達になんか出来る事なんかあるの?」
そう訊くのが関の山だった。
「大丈夫!危ない事はさせないから」
サツキと鈴和が不気味に笑いながら言うのだった。
「じゃあ具体的にどうするのよ」
そう康子が訊くとサツキは
「文化祭に来て貰って、『現代経済研究会』に行くのよ。それで色々と根堀り葉堀り訊いて貰うの……どうそれだけだったら安全でしょう」
そう言って二人を納得させた。
鈴和は「文化祭か、西高は何時?」
そう言ってサツキに訊くとサツキは
「あんたの学校の次の週だよ」
「じゃあ、遠慮なく乗り込めるわね」
そう言って笑いながら鈴和は話していたが、それは事件のほんの入口にさえ差し掛かっていなかったのだ。
「神城先輩には言わなくて良いんですか?」
康子が心配そうに言うと鈴和もサツキも笑いながら
「他所の学校の文化祭に行くだけだから、全く問題無いでしょう」
そう言うのだが、康子は何だか薄っすらとした不安が心を支配していた。
「大丈夫なのかな……」
小さく誰にも聞こえない声で呟いていたので、誰も康子の不安を心配する者はいなかったのだった。
鈴和達の学校の文化祭が9月の中旬に行われた。
康子も鈴和も1年生の女子は、メイドの格好をさせられ、廊下を歩いている人間を呼び込む役目をしていた。
「歴史研究会」の真面目な研究の発表など、誰も好んで聞きに来るハズが無い。
だから女子部員、それも1年生にメイドのコスプレをさせ、色気仕掛けで呼び込む作戦なのだ。
「いらっしゃい!いらっしゃいませ~」
黄色い声をあげて、鈴和と康子が呼び込んで居る。
1年女子は実はこの二人だけだつたのだ。
それでも、美人のほまれ高い鈴和目当てで何人かの男どもが餌食になった。
康子も鈴和と比べると自分は自信が無いと言うが、実は中々の器量でこちらもかなりの数を仕留めていた。
「まあ、これだけ集めれば成功でしょう」
「そうね。鈴和ほどじゃ無いけど、大分集まったしね」
二人はそう言って笑いあっていた。
来週の事など歯牙にも掛けていない感じだった……
2学期が既に始まっていた。
鈴和は康子と美樹と3人でファミレスでパフェを学校の帰りに食べていた。
「あんた達、学祭の準備とかしなくて良いの?」
美樹が半分呆れながら言う。なぜならもう3日も続けて、学校帰りにここに寄っているのだからだ。
「大丈夫!私ら1年なんて当日の案内役だけだから。むしろ資料作りの邪魔になるって」
康子がそう言いながら大きめにカットされた苺を口の中に入れた。
鈴和は何故か、外の様子を気にしている。
やがて、その顔が明るくなった。
そして手をあげて振る。
美樹はその鈴和の視線の先を見て驚いた。
「あ、浅野さん!?」
そう、鈴和が待っていたのは、浅野さんことサツキだった。
サツキは表から三人の姿を見つけると、中に入って来た。
「御免なさい。HRが終わらなくて」
そう言って空いてる席に腰掛けて、驚いて口をパクパクしている美樹に向かって
「美樹、今まで色々と御免ね。私今度鈴和達の組織の一員になったの。それで同じ高校じゃ不味いと言う事で隣の西校に転入したんだ。それで名前は、浅野サツキ。宜しくね」
そう一気に言い切ってしまった。
「あ、ああそうなんだ……ちっとも知らなかったから……」
未だ動揺が隠せない美樹は返事もしどろもどろである。
「本当に御免ね。だからこれからも仲良くしてね」
そう言って右手を指しだした。
美樹も右手を出して仲よく握手をする。
「あたしも苺パフェで」
サツキも同じものを注文をする。
「驚いたでしょう美樹、浅野さん私らの仲間になったんだよ」
そう嬉しそうに言うのは康子だ。
「ちょっと康子、あんた組織に入って無いでしょう!?」
そう窘める鈴和に康子は
「そう硬い事言わないの!」
そう言って笑ってる。
美樹は、やっと事情が飲み込めた様で
「そうかぁ西高か、隣なら年中会えるね」
そう言って赤外線でアドレスを交換した。
暫くは馬鹿な話で盛りがっていたが、やがて鈴和が
「サツキ、何か用事があったんじゃ無いの?」
そう聴くと、サツキは座り心地の悪い顔をして
「うん、実は協力して欲しい事があって、ここに来たんだ」
そうサツキが言うと鈴和は
「だと思った。一昨日と昨日はその事で来れなかったんでしょう?」
そう訊くとサツキは嬉しそうな顔をして
「そうなんだ。本当は一昨日あたりに頼もうと思っていたのだけれどね」
運ばれて来た苺パフェを口に運びながらサツキは話始めた……
「実はね、あたしが今度編入した西高だけど、どうも変なサークルがあるんだ」
「変なサークル?」
三人が同時に訊き返すとサツキは
「うん、表向きは『現代経済研究会』とか固そうな名前なんだけど、どうも怪しいのよね」
「どう怪しいの?」
鈴和が訊き返すとサツキは
「これは、あたしの感なんだけど、恐らく売春組織だと思うの!」
「ば・い・しゅ・ん?」
あまりの事に三人の口調が同じになってしまった。
「まあ、あたしの感なんだけど、同じ女として、その会に入っている娘達がなんか変なんだよね。よしんば売春でなくても、なんか非合法な事をやるサークルだと思うんだよね」
そう言うサツキの言葉に鈴和は
「じゃあ、前のヒロポンとか」
「それは無い。あの学校にはやらなかったから」
そうハッキリとサツキが言うので鈴和は
「じゃあ、調べて、売春だったら組織に連絡する、と言う事でどう?」
そう言ったのだが、美樹と康子は
「調べるって、わたし達になんか出来る事なんかあるの?」
そう訊くのが関の山だった。
「大丈夫!危ない事はさせないから」
サツキと鈴和が不気味に笑いながら言うのだった。
「じゃあ具体的にどうするのよ」
そう康子が訊くとサツキは
「文化祭に来て貰って、『現代経済研究会』に行くのよ。それで色々と根堀り葉堀り訊いて貰うの……どうそれだけだったら安全でしょう」
そう言って二人を納得させた。
鈴和は「文化祭か、西高は何時?」
そう言ってサツキに訊くとサツキは
「あんたの学校の次の週だよ」
「じゃあ、遠慮なく乗り込めるわね」
そう言って笑いながら鈴和は話していたが、それは事件のほんの入口にさえ差し掛かっていなかったのだ。
「神城先輩には言わなくて良いんですか?」
康子が心配そうに言うと鈴和もサツキも笑いながら
「他所の学校の文化祭に行くだけだから、全く問題無いでしょう」
そう言うのだが、康子は何だか薄っすらとした不安が心を支配していた。
「大丈夫なのかな……」
小さく誰にも聞こえない声で呟いていたので、誰も康子の不安を心配する者はいなかったのだった。
鈴和達の学校の文化祭が9月の中旬に行われた。
康子も鈴和も1年生の女子は、メイドの格好をさせられ、廊下を歩いている人間を呼び込む役目をしていた。
「歴史研究会」の真面目な研究の発表など、誰も好んで聞きに来るハズが無い。
だから女子部員、それも1年生にメイドのコスプレをさせ、色気仕掛けで呼び込む作戦なのだ。
「いらっしゃい!いらっしゃいませ~」
黄色い声をあげて、鈴和と康子が呼び込んで居る。
1年女子は実はこの二人だけだつたのだ。
それでも、美人のほまれ高い鈴和目当てで何人かの男どもが餌食になった。
康子も鈴和と比べると自分は自信が無いと言うが、実は中々の器量でこちらもかなりの数を仕留めていた。
「まあ、これだけ集めれば成功でしょう」
「そうね。鈴和ほどじゃ無いけど、大分集まったしね」
二人はそう言って笑いあっていた。
来週の事など歯牙にも掛けていない感じだった……