超能力高校生はパフェがお好き

「超能力高校生はパフェがお好き」 第20話

第20話  「サツキの依頼」

 2学期が既に始まっていた。
鈴和は康子と美樹と3人でファミレスでパフェを学校の帰りに食べていた。
「あんた達、学祭の準備とかしなくて良いの?」
美樹が半分呆れながら言う。なぜならもう3日も続けて、学校帰りにここに寄っているのだからだ。
「大丈夫!私ら1年なんて当日の案内役だけだから。むしろ資料作りの邪魔になるって」
康子がそう言いながら大きめにカットされた苺を口の中に入れた。
鈴和は何故か、外の様子を気にしている。
やがて、その顔が明るくなった。
そして手をあげて振る。
美樹はその鈴和の視線の先を見て驚いた。
「あ、浅野さん!?」
そう、鈴和が待っていたのは、浅野さんことサツキだった。
サツキは表から三人の姿を見つけると、中に入って来た。
「御免なさい。HRが終わらなくて」
そう言って空いてる席に腰掛けて、驚いて口をパクパクしている美樹に向かって
「美樹、今まで色々と御免ね。私今度鈴和達の組織の一員になったの。それで同じ高校じゃ不味いと言う事で隣の西校に転入したんだ。それで名前は、浅野サツキ。宜しくね」
そう一気に言い切ってしまった。
「あ、ああそうなんだ……ちっとも知らなかったから……」
未だ動揺が隠せない美樹は返事もしどろもどろである。
「本当に御免ね。だからこれからも仲良くしてね」
そう言って右手を指しだした。
美樹も右手を出して仲よく握手をする。
「あたしも苺パフェで」
サツキも同じものを注文をする。
「驚いたでしょう美樹、浅野さん私らの仲間になったんだよ」
そう嬉しそうに言うのは康子だ。
「ちょっと康子、あんた組織に入って無いでしょう!?」
そう窘める鈴和に康子は
「そう硬い事言わないの!」
そう言って笑ってる。
美樹は、やっと事情が飲み込めた様で
「そうかぁ西高か、隣なら年中会えるね」
そう言って赤外線でアドレスを交換した。

暫くは馬鹿な話で盛りがっていたが、やがて鈴和が
「サツキ、何か用事があったんじゃ無いの?」
そう聴くと、サツキは座り心地の悪い顔をして
「うん、実は協力して欲しい事があって、ここに来たんだ」
そうサツキが言うと鈴和は
「だと思った。一昨日と昨日はその事で来れなかったんでしょう?」
そう訊くとサツキは嬉しそうな顔をして
「そうなんだ。本当は一昨日あたりに頼もうと思っていたのだけれどね」
運ばれて来た苺パフェを口に運びながらサツキは話始めた……

「実はね、あたしが今度編入した西高だけど、どうも変なサークルがあるんだ」
「変なサークル?」
三人が同時に訊き返すとサツキは
「うん、表向きは『現代経済研究会』とか固そうな名前なんだけど、どうも怪しいのよね」
「どう怪しいの?」
鈴和が訊き返すとサツキは
「これは、あたしの感なんだけど、恐らく売春組織だと思うの!」
「ば・い・しゅ・ん?」
あまりの事に三人の口調が同じになってしまった。
「まあ、あたしの感なんだけど、同じ女として、その会に入っている娘達がなんか変なんだよね。よしんば売春でなくても、なんか非合法な事をやるサークルだと思うんだよね」
そう言うサツキの言葉に鈴和は
「じゃあ、前のヒロポンとか」
「それは無い。あの学校にはやらなかったから」
そうハッキリとサツキが言うので鈴和は
「じゃあ、調べて、売春だったら組織に連絡する、と言う事でどう?」
そう言ったのだが、美樹と康子は
「調べるって、わたし達になんか出来る事なんかあるの?」
そう訊くのが関の山だった。
「大丈夫!危ない事はさせないから」
サツキと鈴和が不気味に笑いながら言うのだった。

「じゃあ具体的にどうするのよ」
そう康子が訊くとサツキは
「文化祭に来て貰って、『現代経済研究会』に行くのよ。それで色々と根堀り葉堀り訊いて貰うの……どうそれだけだったら安全でしょう」
そう言って二人を納得させた。
鈴和は「文化祭か、西高は何時?」
そう言ってサツキに訊くとサツキは
「あんたの学校の次の週だよ」
「じゃあ、遠慮なく乗り込めるわね」
そう言って笑いながら鈴和は話していたが、それは事件のほんの入口にさえ差し掛かっていなかったのだ。

「神城先輩には言わなくて良いんですか?」
康子が心配そうに言うと鈴和もサツキも笑いながら
「他所の学校の文化祭に行くだけだから、全く問題無いでしょう」
そう言うのだが、康子は何だか薄っすらとした不安が心を支配していた。
「大丈夫なのかな……」
小さく誰にも聞こえない声で呟いていたので、誰も康子の不安を心配する者はいなかったのだった。

 鈴和達の学校の文化祭が9月の中旬に行われた。
康子も鈴和も1年生の女子は、メイドの格好をさせられ、廊下を歩いている人間を呼び込む役目をしていた。
「歴史研究会」の真面目な研究の発表など、誰も好んで聞きに来るハズが無い。
だから女子部員、それも1年生にメイドのコスプレをさせ、色気仕掛けで呼び込む作戦なのだ。
「いらっしゃい!いらっしゃいませ~」
黄色い声をあげて、鈴和と康子が呼び込んで居る。
1年女子は実はこの二人だけだつたのだ。
それでも、美人のほまれ高い鈴和目当てで何人かの男どもが餌食になった。
康子も鈴和と比べると自分は自信が無いと言うが、実は中々の器量でこちらもかなりの数を仕留めていた。
「まあ、これだけ集めれば成功でしょう」
「そうね。鈴和ほどじゃ無いけど、大分集まったしね」
二人はそう言って笑いあっていた。
来週の事など歯牙にも掛けていない感じだった……

「超能力高校生はパフェがお好き」 第19話

第19話 「異世界から来た子供」

今から14年前の事だった。
上郷陽子は娘の鈴和を連れて買い物から帰って来る途中だった。
何時も鈴和が遊んでいる近所の公園の前を通りかかった処、公園のベンチに見慣れない男の子が座っているのを発見した。
見慣れない子だと思い、陽子は鈴和を連れてその男の子の所に行ってみた。

傍に行くと、その子も気がついた様だが陽子が「ボクどうしたの? お母さんは?」
と訪ねても何も言わなかった。
見ると男の子は3歳ぐらいであり、色が白く顔立ちはハーフかクオーターを思わせるものがあった。
陽子は、この子は外国の子かも知れないと初めは考えた。
だから、言葉が判らないのだと……
だがそれは違っていた。いきなり陽子の脳内に
『あなたは誰ですか?』と問掛けてきたのだ。
「この子は能力者だ!」
陽子はひと目で見抜き、自分も最近使える様になったテレパシーで意志の疎通を行う様にした。
そうしたら娘の鈴和がニコニコ笑って
「お母さん、このお兄ちゃん。違う世界から来たんだって!」
そう言ったのだ。娘のが対応が早かった。

陽子はその男の子を連れて家に帰って来た。
既に来月に控えている第2子の出産に備え、母が実家から来ていた。
「おかえりなさい。あら、その子は?」
母の問に陽子は今迄の事を話した。すると母は
「お父さんにも来て貰いましょう。それから達也さんにも仕事が終わったらなるべく早く帰って来て貰う様に」
そう言われたので、それぞれに連絡をする。
最もテレパシーで思いを送るだけで良いのだが……

ダニングのテーブルに座らせ、ジュースを出してあげる。
鈴和が横に座り、ストローを口に加え「こうやって飲むんだよ」と教え、それを見て同じ様に真似をしてジュースが口に入るとやっと笑顔を見せた。
「良かった……」
とりあえず陽子はそう思うのだった。

落ち着いた男の子に色々と聴いて見る事にした。
勿論会話では無くテレパシーで訊くのだ。
『あなたお名前は?』
『●※□#』
『どういう世界からきたの?』
『人どうしが争っていて恐い世界』
『戦争していたんだ?』
『戦争? わからない』
『あなたの所ではみんな心で話せるの?』
『みんなできる』
『じゃあ言葉は無いの?』
『ある、心で話せない人もいるから』
『じゃあ何か話してみせて』
そう陽子が伝えると少年は何かを口にした
「●※□#▲●※□#▲」
全く何を言ってるのか理解出来なかったし、この世の言葉とは思えなかった。

その後、この頃の組織の会長の陽子の父親や夫の達也が帰って来て、善後策を相談する。
その間、少年は鈴和と仲良く遊んでいた。
どうやら二人はウマが合うらしかった。
その間に陽子は御飯をたべさせたり、色々と世話をしていた。
この時まで判った事は、どうやら少年の世界では能力者同士の戦争が起きており、
能力者があまりにも多く能力を使った為に次元の壁が弱くなり、一部が壊れ、少年はそこに落ちてしまったのだろうと言う事だった。
そしてこの世界に転がり出たと言う訳だった。

「今日はウチに泊まらせるか、でも名前ぐらい訊いておかないとな」
夫の達也がそういうので、陽子は少年に訊いてみた。
『あなたお名前は?』
『●※□#』
『それがお名前なの?』
先ほどと同じ答えだった。
『判らないけど、迷子になったらそう言えと言われた』
『そう』
陽子は達也にその事を伝えると達也は少年の頭をなで
「今日から君は、剛志くんだ!いいね。これからうちで暮らしなさい」
そう言って名前を決めてしまった。
それから、彼はこの上郷の家で育ったのだ……

小学校に入学する時に。櫻井の親戚の神城家が養子を欲しがっていたので、本人納得の上で養子縁組をした。
戸籍などは組織が偽造して誤魔化したのだが、この時に達也は彼の能力を発見したのだ。
いわゆる、「支配」と言う特殊な能力を……
神城家はかなりの資産家だが跡継ぎが居なかった。
当主が病気になった時に剛志と養子縁組をしたのだ。
従って、神城剛志は今でも神城家のお屋敷に住んでいる。
鈴和とは兄妹みたいな関係でもあり、この世界で初めて心を許せた人でもあるのだ。

神城は色々な事を思い出していた。
もう以前の世界の事は殆ど思い出せないが、何時帰れるのだろうか?等とたまに思うが、
きっとこの世界の方が良いと思うハズと考えていた。
今日は神城家に鈴和と康子が遊びに来ている。
鈴和は康子の付き添いと言う感じだ。
神城家には代々仕えている執事の岡さんと家の用事をしてくれる斎藤さんという二人が家を取り仕切っている。
だから、神城としては自分では家の事はあまりしない。
いや、したくてもさせてくれないのだ。
神城家には多くの家作がありマンションも幾つも経営している。
それらは殆ど執事の岡さんが仕切ってくれていて、神城は書類を見て判子を押すだけだ。
彼が不正をしないのは良く判っているし、神城は彼の功績に対して幾つか家作を与えていた。
だから彼もまた大家なのだった。

「鈴和お嬢様、そんなにはしゃぐとお洋服が汚れて仕舞いますよ」
岡さんは優しく鈴和をたしなめる。
「岡さん頼むから、お嬢様だけは止めてくれないかな!なんか背中がこそばゆくて」
そう鈴和が言うと岡さんは
「とんでも無い!世が世であれば、櫻井財閥のお嬢様なのですから」
鈴和はそれは判っていたが、やはり自分はあくまで上郷の人間と言う思いがあった。
「でも斎藤さんの作ってくれるパフェの美味しさはどう鈴和?」
康子がそう鈴和に問い正すと鈴和は
「そりゃ、比べたら他所が可哀想なくらい美味しいわよ」
二人は斎藤さんが作ってくれたパフェを楽しそうに食べている。
その様子を見ながら神城は「自分がこうして行きてこれたのも皆、上郷と櫻井の人々のおかげと思っている。勿論神城のお爺さんにも大変世話になった。だから自分はこの人達の為にも一生懸命に生きて行かなくてはならない」と思うのだった。

束の間の休息はやがて破られる事になる。
事件はすぐそこまでやって来ていた……

「超能力高校生はパフェがお好き」 第18話

第18話 「束の間の休日」

 東京に帰った鈴和は早速康子を訪ねた。
そしておみやげを康子に渡したのだ。
「ふううん、でこれが、ビリケンさん?」
携帯のストラップを見ながら康子が訪ねる。
「そう、願いが叶うんだよ」
鈴和はそう言って康子を見る。康子は多分あのことを訊いて来るだろうと言う予測があった。
「ねえ、神城先輩は何で後から大阪に行ったの? 初めは行かない筈だったでしょう?」
やはり、康子の心配は神城なのだと鈴和は思い
「それはね、向こうで霊の問題だけじゃ無くなったから、どうしても先輩の力が必要になったのよ」
鈴和はそう言って、大阪でのマックスの事を語って聞かせた。
「だから、名古屋の英梨ちゃんて言う子も一緒だったから、むしろその子が神城先輩のファンで、その方が私大変だったんだから……」
それを聞いて康子は
「むむむ、ライバル出現ね」
と何やら決意を新たにした様である。

「私は兎に角残りの夏休みを休ませて貰うわ」
鈴和はそう言って伸びをして、康子に笑われた。
「でも、サツキって言うあんたを狙っていた能力者も捕まって良かったじゃ無い」
そう言う康子の言葉を聞いて、後で、どうなったか訊いてみようと思うのだった。

家に帰り、母親に「ヒロポン」事件の事とサツキの事を訊いてみた。
「ヒロポンの事は大分進んで、この辺ではもう売り買いは無くなりましたよ。他の地域ではまだ若干あるみたいですがね。それから向こうの能力者の人ですが、 お父さんのあまりの能力の凄まじさに驚き、素直に全て話してくれました。そして、今後は私たちの組織の一員として行動する事になりました」
それを訊いて驚いたのは鈴和だった。
まさか、二度も自分を殺そうとした奴が同じ組織の一員になってるなんて……
「イヤだな……」
そうポツリとコボすと陽子は
「そう言わずに、今度会ってみたら? きっと驚くわよ。お父様が色々とやってあげたから、印象違うと思うわよ」
そう言ったのが気がかりだった。

次の日、起きるともう昼近かった。
のろのろと起きて顔を洗い身支度すると、母と弟と一緒に昼ご飯を軽く食べて「組織に行ってみる」
そう言い残して表にでた。
夏の太陽が鈴和を襲う。
「こりゃ、たまらないな、テレポートしちゃおう」
そうつぶやくと、その姿は消えていた。

鈴和は組織のあるビルの前にいた。
正面から堂々と入っていく。
受付で受付の女子にテレパシーを送り了解を得ると
「父は居ますか?」と訪ねてみた。
すると、5階の会長室ににいます」と返って来たので、礼を言ってエレベーターに乗った。

5階で降りるとすぐそばの「会長室」と書いてある部屋のドアを開ける。
秘書の人とは面識があるので、すぐに奥に案内される。
「どうした? 休んでて良いのだぞ」
そう父親の達也に言われたが鈴和は
「お父さんこそ会社の方?」
「大丈夫だ! 夕方までには会社に帰るから。それよりここに来たのはサツキに会ってみたかったからだろう!?」
そう言われてしまった。
図星だった。自分を二度も窮地に追い込んだ相手がどう変わったのか見て見たかったのだ。

「ここに居るの?」
その鈴和の問いに達也は
「ああ、地下の訓練場で訓練しているよ。お前と会いたがっていたから喜ぶぞ」
それを聞いても鈴和はぞっとしなかった。
「お父さん具体的にはどうしたの?」
鈴和はサツキをどう変えたのか興味があったのだ。同じ能力者として興味もあった。
「ああ、まず魂を幽体離脱させ、隠っている悪意を洗い流した。そして生まれた時に持っている心の状態にして、今までのしがらみ等を捨てさせたんだ」
聞くだけなら簡単そうだが、自分の今の能力では到底出来ないと鈴和はおもうのだった。
「会って来ても良い?」
そう聞くと達也は「もちろんだ」
そう言って許可してくれた。

鈴和は通常のエレベーターでは無く、「訓練場」直通のエレベーターに乗り込んだ。
やがてドアが開くと、そこは能力者が訓練をする訓練場だった。
すでに色々な能力者が自分の技を磨いている。
広い訓練場の隅に一人静かに瞑想している者がいた。
「サツキだ!」鈴和はすぐに判った。

鈴和は傍に行きサツキの瞑想が終わるのを待っていた。
やがて、サツキは目を開けると
「あんたが来てくれたのはビルの中に入った時から判っていたよ」
そう言って笑いながら声を掛けられた。
「あんたにはお詫びとお礼を言わなければならないと思っていたんだ。前の組織の命令とは言え、なんで、あんなにあんたを憎んでいたのか今では良く思い出せ無いくらいでさ。本当に済まない事をしたと思ってる」
それを聞いた鈴和は、サツキの気が全く変わっているのに気がついた。
「もういいよ、済んだ事だし、でもあんた強かったね」
そう言って今度は鈴和が笑った。それを見てサツキは自分が許された事を悟った。
「この組織には本当に世話になったから、今度はお返しも含めてここで頑張ろうと思ってるんだ」
「そうなんだ、それは良かったけど、前の組織からは狙われないの?」
鈴和は疑問を口にしたが、サツキは
「ああ、それは大丈夫なんだ。あなたのお母さんが向こうの世界からこっちに来れない様に結界を張ったので、誰もやって来れなくなったんだ。向こうにも行けないけれどね」
「そうか、お母さんあれやったんだ。じゃあもう無理だわ」
「そう言う事」
「遅くなったけど、これから宜しく」
そう言ってサツキが手を出したので鈴和もそれを強く握り返した。
「ところで、あなたの本当の仕事は片づいたの?」
そうサツキが聞くので鈴和は
「それは、すっかり片がついたわ」
「それは良かった」
そう言って二人は笑うのだった。
「今度美味しいパフェの店教えてあげるからね」
そう言って鈴和が笑うとサツキは
「それは、あんたの奢り?」
そう笑いながら言うので鈴和も
「そうねえ、最初の1回は歓迎の意味も込めて奢ってあげるわ」
「なら付き合う」
二人はそう言って笑い合った。

「超能力高校生はパフェがお好き」 第17話

第17話 「悪い奴ほど良く怖がる」

  マックスを後にした神城は内心ほくそ笑んでいた。
マックスの会社自体が未だ神城の結界の中にあり、すべての事は手に取る様に判るのだった。
神城は「全く大人しくしていれば痛みは少なくて済むのに、こうなったらとことんやるか」
そうつぶやくと、鈴和達の待っているホテルに帰って行った。

「どうでした?」
待っていた鈴和が早速訪ねる。
「うん、予想通りで素直にはならないね。それに僕達に刺客を送り込んだみたいだ」
そう神城が言うと鈴和は
「はあ~身の程知らずと言うか……せいぜい可愛がってあげましょう先輩」
笑いながらそう言うと神城も
「大丈夫だよ、マックスの会社自体もまだ僕の結界にあるから、これから面白い事が起きるよ」
そう言って神城は楽しそうに笑った。

マックスから連絡を受けた例のコンサルタントはマックスで話の内容を聴いていた。
「じゃあ、こいつを殺ればいいんですね。自殺と言う何時ものやりかたで済ませますかね」
そう言って笑い、タバコに火を点けようとしてライターを点けると、なんとライターの火が暴走したのだ。
「アチチチ」
慌ててライターを放すが周りの書類に火が燃え移る。
あっという間に会社の中が火の海となってしまった。
途端に天井のセンサーが動作してスプリンクラーが作動した。
「プシュウー」と大量の水が社内を埋め尽くす。
火は消えたものの、あたり一面水浸しになって仕舞った。
「ちょっと、タバコは遠慮して下さいよ。おたくの上の組織に損害を弁償して貰いますよ」
課長の石野はずぶ濡れになりながらもコンサルタントに文句を言った。
言われたコンサルタントは
「いや、申し訳無い、こんな事は初めてで……」
そう言ってハンカチで顔の水を拭っていると、今度は明かりが消えて社内は真っ暗になった。
「停電か?」
「いえエアコンはついています」
「じゃあブレーカーだ、早くあげろ」
そんな声が飛び交っていた時だった、薄暗い中で何か恐ろしげな声が聞こえて来たのだった。
「……だましたな!……よくも騙したな」
「だ、誰だ!」
石野が声のする方を見ると、先ほど神城に見せられた工事現場の霊がそこに出ているではないか!
「うわああ~」
石野の声に一斉に騒然となる社内。
女子社員は皆驚き泣き叫び、腰を抜かして顔を両腕で隠してしまう。
男の社員も顔面素白で何も言えなくなっている。
やがて霊達はコンサルタントと石野の周りをぐるぐる廻り始めた。
「こ、これはきっとあの霊能者の仕業だ。あいつ本物だったんだ!」
石野はそう思いながらも、このままでは全く業務が出来ない事を悟った。
コンサルタントは恐ろしげな様子で
「悪いけど、今回は降ろさせて貰うわ、相手が悪すぎる」
そう言うと床を這いずりながら這々の体で逃げ帰って行った。
「冗談じゃない!安いコンサルタント料で命まで捧げられるかよ」
逃げながらも考えるコンサルタントだった。

残された石野を始め社員はもう恐怖と絶望の淵にいた。
「課長何とかして下さい」
若手社員の必死の叫びに石野は、破れかぶれで
「判った! アンタの言いなりになろう!」
そう大きな声で叫ぶと、不思議な事に、社員たちの周りを廻っていた霊の姿は消えて行った。
「やっぱりアイツの仕業か……今回は相手が悪い……言いなりになるしか無いだろう。
この事で使う金額はM不動産に渡す時に上乗せするしか無いな……もう御免だ。あんな詐欺を働いてまで業績をあげるのは……」
石野は心の底からそう思うのだった。
全ては神城の能力「支配」のせいだった。
この結界の中では神城の思い通りに物事が動くのだ。
その中では誰も抵抗出来ないのだ……

その後、マックスは神城の言う通り、遺族に正規の土地の購入金額を支払い、敷地内に慰霊碑(工事で亡くなった人の分も含めた)を立てる事を約束して書類にサインした。
「もし、約束不履行なら、今度はこんなものでは済まないと思って下さいね」
組織の弁護士を伴って霊能者に扮した神城はそう言い放った。
「それは大丈夫です。なんせバックは天下のM不動産ですから……」
石野は苦しげに言い訳をするのだった。

その事を工事現場にいる霊達に報告をすると、霊達も喜んで
「これで成仏出来ます」
そう鈴和にお礼を言ったのだった。

「ねえ、先輩、もしあの脅かしで屈しなかったらどうしてました?」
鈴和が大阪の市内のうどん屋で「きつねうどん」を三人で食べながら神城に訊いている。
「ちゃんと考えていたよ。それはね」
そう言って神城は二人の前に書類を見せた
「ふどうさんばいばいけいやく……不動産売買契約書……つて?」
英梨が不思議そうに尋ねると神城は
「ああ、架空の不動産売買の話をマックスに持ちかけて、マックスを詐欺に引っ掛けるのさ、
それも完全犯罪をね、いや犯罪の証拠も残さずに出来るけどね」
それを聴いて鈴和は、神城なら簡単にやってしまうだろうと思っていた。
何故なら、鈴和は神城の本当の能力を知る数すくない人間の一人だったからだ。

「ねえ、神城さん、鈴和さん、帰りに名古屋で降りて味噌カツを食べて行きませんか?
それに、栄に美味しいパフェを食べさせる店もあるんですよ」
それを聴いた鈴和は目を輝かせて
「そりゃ寄らないとねえ先輩!」
「そうだな、今回は良く働いたから、それぐらいは許して貰わないとな。でも鈴和ちゃんは食べたら真っ直ぐ家に帰るんだよ」
「判ってますよ!」
鈴和はそう言って笑って、英梨とスマホを出してお店のチェックを始めるのだった。

「そうそう、鈴和さん、うどんと言えば大阪駅のホームでJRが営業している立ち食いのうどん屋さんは結構美味しいですよ。もう一杯食べて帰りましょう!」
そう言英梨に鈴和は「冗談じゃ無い!あんたは食べた分が皆、背に行くのでしょうが、私はお腹とか背中に付いちゃうから嫌! パフェが食べられ無くなるじゃ無いの!」
「大丈夫!大丈夫!入る所が違いますから」
「違わないよ!先輩も笑って無いでなんか言って下さいよ英梨に」
そう云われて笑って見ていた神城は
「そうだね、大阪には滅多に来ないから、食べて行くか!」
そう言って英梨の考えに賛成をした。
「ああんもう! 帰ったらダイエットしなくちゃ。大体関西は美味しいもの多すぎで、ただでさえ太ると思っていたのよねえ~」
「あれ、鈴和さん彼氏に見せるのですか、いいですね~モテる人は」
「英梨、私は彼氏なんて未だに居ないから!」

きっとこの二人は最後までこうやって言い合いをするのだろうな?
と神城は思ったのだった。

「超能力高校生はパフェがお好き」 第16話

第16話 「危機一髪」

今、まさにサツキの刃が鈴和の喉元を裂こうとした瞬間、その刀は粉々に砕け散ってしまった。
あっけに取られているサツキをよそに、鈴和は内心助かったと思った。
そこに懐かしい気を感じたからだ。
サツキが次の攻撃を仕掛けようとしたその時、体が動かなくなってしまった。
目蓋さえ動かす事は出来ないのだ。サツキはその時、圧倒的な力の差を感じ、そして恐怖さえ覚えるのだった。
そして、その時「何とか間に合ったな。良かった」
そう言って上郷達也が姿を表したのだ。
「お父さん!どうしてここへ?」
「神城くんから連絡を受けて、やって来たんだ。あまり無茶をするなよ。母さんも心配してるから、一度ぐらい連絡を入れろ」
そう言って「こいつは本部に連れて行って、洗いざらい喋って貰う。ヒロポン事件の事も含めてな」
達也がそう言うと脇から神城と鈴和が姿を表した
「鈴和ちゃん。無理はイケナイよ。今回は僕達も判ったから良いけど、一人で戦おうなんて無茶過ぎるよ、それに万全の体調じゃ無かったのだから」
神城がそう言うと英梨も
「そうですよ、あんなに黒い気があるのに鈴和さん気が付か無い感じだったら、私達お芝居したんですよ」
そう言って笑っている。
鈴和は、そうか、自分はそれほどまで能力が落ちていたのか、と思い直し
「ありがとうね。お父さん、神城先輩、そして英梨。感謝します」
鈴和にしては珍しく素直に頭をさげた。
「じゃあ、こいつは連れて行くから」
そう達也が言うとサツキを連れて姿が見えなくなって行った。

「さあホテル帰りましょう! 新世界は今日は行けなくなってしまったけど」
英梨の提案に神城も鈴和も賛成した。
「でも帰りにホテルの傍の喫茶店でパフェ食べて帰りましょうよ」
そう言って鈴和が甘える様に言うと二人とも
「当然鈴和ちゃんの奢りだよね」と言って笑う
「うん、仕方無いね」
鈴和も舌を出しながら言って笑ってる。
「じゃあ、わたしは、チョコパフェがいいな!」
英梨がそう言って注文を付けると鈴和は
「はいはい、何でも頼んでね!」
三人は喫茶店に入って行った。

夕方のニュースは6時台の「話題の地域」と言うコーナーで紹介、放映された。
神城の渡した映像がほぼそのまま使われていた。
「ほう、かなり長く映してくれたね。今後が見ものだぞ」
画面をみながら神城が言うと、鈴和が
「番組が終わったら見に行く人が居るでしょうね?」
そう訊くと、英梨も
「それやいますよ!わたしだったら行っちゃいますもん」
笑いながら言うと神城が
「ほら、見てご覧!もう見に行く人がいるよ」
そう言って窓の外を指刺す。鈴和と英梨もその方向を確認すると
「わあ、いるいる!ゾロゾロ行く!」
英梨が興奮しながら見ている。
鈴和も、ひょっとしたら、思ったより騒ぎは大きくなるかも知れない、と思うのだった。

翌日からマンションの工事現場は一種の観光地と化してしまった。
夜になると各地からお化け見たさにやって来るのだ。
鈴和は工事現場の霊達に、人が大勢居る時は出ない事。人が少ない時に出る事。
兎に角、やたら出ない様に言い含めるのだった。
その内に段々噂は広まり、マックスも傍観出来なくなって来て、ガードマンを雇って
見物人を排除し始めた。
その為、見に来た者と軋轢が生じ始めた。
ここまでは、神城の描いた予想通りとなっている。
あとは、何時マックスに乗りこむかだけだ。
「焦る事はない」
そう思って、三人はホテルで夏休みの課題をやっていたり、それこそ新世界に串かつを食べに行ったり、異人館見物に行ったりしていた。
鈴和は異人館がとても気に行った様で
「また来たい!」と口に出していた。

騒ぎがかなり大きくなり、マックスでも困っている頃とみた神城は
大阪市中央区にあるマックスの関西本部が入っているビルの前に居た。
このビルも当然M不動産所有のビルである。
このビルの3~4階を使用しているみたいだ。
神城はエレベーターを3階で降りて、受付に名刺を出す。
神城のきょうの姿はビシッとしたスーツ姿で名刺には「霊能者」と肩書が書いてあり、
「除霊受付ます」と書かれてあった。
当然、神城は能力を使っていて、その結界に入った者には神城は、如何にも霊能者と思わせる貫録をしており、信用に値する雰囲気を漂わせていた。
名刺と神城を見た受付嬢は「少々お待ち下さい」と言って奥に消えて行った。

神城の名刺を見たのは、マックスの建築課の課長、石野だった。
「くそ、この事は親会社のM不動産がTV局に圧力をかけて、話題にしない様にしていたんだが、
あそこが放送しやがったからなあ……あそことはM不動産とあまりCMの取引が無かったからな」
石野がそう呟いて考えていると、横に居た若手が
「自分が出て対応しましょうか?」
そう言うので石野も「そうだな、取り敢えずそうして貰ってその間にMI不動産に連絡入れるわ」
そう言うやりとりがあり、応接室に案内された神城の前にその若手が出て来た。
「どういうご用件でしょうか?」
しらばっくれて訊くしか無いのだが、若手はその霊能者が、あまりにも立派なので気後れしてしまった。神城は「最初は若手か」と思ったが、そこはボロを出さず。
「実はおたくが建築中の「伊丹パークホームズ」ですが、最近あそこに霊が出ると言う事らしいですね。お困りじゃ無いんですか? よろしければ私どもは除霊やその他霊障を除外する仕事を請け負っております」
とそう述べて相手の反応を伺う。
若手社員は「これは本物だ!」と思い、焦って
「少々お待ち下さい」と言ってまたまた奥に行ってしまった。
「慌ててるか……面白くなって来たな」
そうほくそ笑んでると、今度は課長の石野が出て来た。
「お待たせ致しました。建築課、課長の石野です。伊丹は私が責任者をさせて戴いております」
そう言って名刺を出した。
神城は、先ほどと同じ文言を繰り返して石野の出方を伺うと石野は
「幽霊が出るなんと言うのは単なる噂に過ぎません。TV局にも困った事で現在法的手段に訴える事も検討中です。そう言う訳ですので、大変有りがたいお話ですが……」
そこまで言った時に神城は
「これをご覧になってから、検討して戴きたいのですが」
そう言って、工事現場で鈴和と英梨が撮影した動画をノートパソコンで見せ始めた。
それは、被害者がマックスの手口を話してる動画で、TVで放送されたものでは無かった。
「こ、これは……」
石野は、余りの衝撃的な映像に激しいショックを受けた。
「私は霊能者です、霊と何とでもコミュケーションを取る事が出来ます」
神城はそう石野に言うと、パソコンからDVDを抜き出して
「この映像は差し上げましょう。よ~く検討して戴きたいですからね。いいお返事待っています」
そう言って神城は席を立つて帰ろうとする。
石野は慌てて取りすがる
「ちょっと待って下さい。今親会社と調整中ですから」
「ふん、そうかM不動産に報告済みか、若しかしたらこの様子も監視カメラで撮影されてるな。だが大丈夫だ僕の能力はそんなものでは見破る事は出来ない。
この現場そのものが僕の結界なのだ。その結界の中にあるものは全て自分の思い通りの制御が出来る。つまり撮影された映像は僕の思っている映像が記録されるのだ。僕の本当の能力は「錯覚」では無い、自分の結界の中の完全な支配さ。つまり能力「支配」なんだ。
これはボスとマザーしか知らない。僕の恩人の二人しか……」
神城はそう思っていたが、拉致があかないと思い
「また、おじゃましますから、その時に良いお返事を期待しています」
そう言い残してその場を後にした。

残された石野と若手社員は
「どうしますか?……」
そう言う若手社員の言葉に石野は
「業務解決コンサルタントに連絡して、あの御仁を事故にあわせろ!」
そう指示をした。
「こう言う場合に始末してくれる為に高い金を払っているのだから」
石野は裏の世界で始末を付ける事を選択した様である。
「判りました。すぐに連絡します」
若手社員はそう言いって自分の机の上にある電話で、そのコンサルタントに連絡をした。
「課長、これからこちらに来るそうです」
「そうか、今に見てろよ、クソ霊能者め……」
石野は不敵に笑うのだった。
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