葉山くんシリーズ

にわか高校生探偵団の事件簿シリーズ(葉山君シリーズ)二次創作  定期公演に潜む闇 2

 どうやら他の衣装にイタズラはされてはいない様だった。
「じゃあヒロインの娘を妬んでイタズラしたのですかね」
 翠ちゃんが早速推理を開始する。
「でも実際は衣装係の娘が被害を受けたのだから、そう一概には言えない気がするけどな」
 僕は先ほどから考えていた事を口にした。すると柳瀬さんが
「そうよね。衣装にイタズラされて実際に被害を受けるのは衣装係だものね」
 そう言いながらイタズラされたヒロインの衣装を手に取った。それを見て柳瀬さんの表情が若干変わったのを僕は見逃さなかった。僕はミノに合図をして、物陰に来て貰った。
「どうした葉山、何か気がついたのか?」
 ミノは部長として責任を感じている筈なのだろうが明るく振る舞っている。
「衣装って一着しか無いのかい? 予備とかあるとか……」
「うん、確かにあるけど、それは今日は持って来て無いよ」
「どうして?」
「だって、あくまで予備だから、何かあった場合明日持って来る事になっているんだ」
「と、言う事は予備は学校にあるのかい?」
「ああ、部室に保管してあるよ」
 僕はそれを聞いて、ある種の危機感を感じた。恐らく柳瀬さんもそれを感じたのだろう。表情が変わったのはその為だと思った。
「ゆーくん、学校に戻って確かめないと」
 やはり僕の考えと柳瀬さんの考えは同じだと思った。
「タッくん。悪いけど車のキー貸してくれる? 市立に戻りたいのよ。確かめたい事があるから、それが終わったら直ぐに帰って来るから」
 柳瀬さんは市立からこの市民ホールに来る時に乗って来た車の持ち主からキーを借り受けると
「行くわよ!」
 僕の腕を掴んで走りだした。
「柳瀬さん免許持っていたのですか?」
「先週取ったの! だから大丈夫よ!」
 何が大丈夫なのだろう……まさか、免許取って最初の運転?
「大丈夫よ。わたし運転上手いから」
 柳瀬さんは僕の不安を見越していたのだった。
 地下の駐車場に降りて車に乗り込むと柳瀬さんはエンジンを掛けてゆっくりと走り出した。確かに思ったより運転が上手だった。
「実はね、教習所に通ってる間にもパパに乗って貰って深夜に練習していたのよ。だから随分運転はしてるのよ。これ秘密だからね。ゆーくんだから言ったのよ」
 そんな秘密を打ち明けられても僕には一向に関係ないと思うのだが、どうやら柳瀬さんは僕と運命を一緒にしたいと思っているようだ。
「もし事故っても二人一緒だから構わないわよね。新聞なんかにも『高校生と大学生コンビ』とか書かれるでしょう」
 そんな事を言って僕を横目で見ていた。柳瀬さん、それは良いですけど前を向いて下さい!
 車は表に出ると捕まらないギリギリの速度で車を走らせて市立に乗り付けた。降りると急いで演劇部の部室に向かう。
 もどかしく鍵を開けると衣装をしまっている棚に向かう。僕には何が何処にしまってあるのか一向に判らないが柳瀬さんは迷わずにやや大きめの衣装ケースを指差して
「ゆーくん、それを卸して欲しいの」
 言われた衣装ケースを卸すと柳瀬さんが蓋を開けた。そして中の衣装を調べると、それは無残にもビリビリに引き裂かれていた。
「犯人の目的はこっちだったのですね」
「酷い! これなら補修が出来ないわ。替えが無い状況を作り出してから、さっきの犯行を行ったのね。明日気がついたなら間に合わない所だった」
 柳瀬さんの顔色が変わって来た。そして僕に
「演劇部のOBとして許せない! ゆーくんわたしに協力してね! 一緒に犯人を捕まえましょう」
 そう言って僕の手を掴んで潤んだ瞳で僕を見つめて来た。そんなに見つめられたら僕は……僕は柳瀬さんの背中に両腕を回すとしっかりと抱きしめた。
「嬉しいわ……やっぱりゆーくんはわたしなのね……こんな場面があるなら誰かスマホで写真を撮ってくれないかしらね。それをあの娘に見せつけてあげたのにね」
 気が付くと目の前の柳瀬さんは僅かに笑って嬉しそうな表情をしていた。先ほどの潤んだ瞳は演技だったのかしら?
 そう思っていたらいきなり口を塞がれて濃厚で柔らかいものが僕の口の中に入って来てかき回して抜けて行った。
「今のは手付みたいなもの。事件が解決したら、わたしの全てをゆーくんに捧げるからね」
 柳瀬さんはそう言って僕の事を抱き締めてくれた。これって他の人が見たら完全にラブシーンではないだろうか?
「今回は出来れば伊神さんは呼びたくないわね。わたし達二人で解決しましょうね」
 柳瀬さんはそう言って僕の腕を掴んで停めてあった車に乗り込んだ。市民ホールに帰る道すがら
「でも、犯人の目的がイマイチ判りませんね」
 僕が柳瀬さんに疑問を言うと
「どう言う事? 目的は公演の妨害でしょう?」
 そう言って反論して来た。そこで僕は運転をしている柳瀬さんに分かり易く説明をした。
「だって演劇部に詳しい者なら今回の公演に、僕や柳瀬さんが手伝いに来ると言う事は判っていたはずです。それなのにこれまでの犯行は直ぐにバレるものばかりです。本来の妨害の工作の本命は別にある気がするんですよ」
「確かにわたし達なら直ぐに気がつく事ばかりね……じゃあこれから何か起きるのかしら?」
 それも否定出来ないし、もう仕込まれてしるのかも知れない。
「柳瀬さん……犯人の目的が僕と柳瀬さんを市民ホールから遠ざけるのが目的だったら?」
 僕の言葉を聴いた柳瀬さんの顔色が再び変わり
「ゆーくん、少し飛ばすからしっかり掴まっていてね」
 そう言ってアクセルを強く踏み出して車の速度を上げたのだった。

にわか高校生探偵団の事件簿シリーズ(葉山君シリーズ)二次創作  定期公演に潜む闇 1

え~新しいエピソードです。ミステリー書けない者が学園ミステリーの二次創作を書いてるのもおかしいのですが、グデグデにならないように進めたいと思います。多分、少し長めです。

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 ゴールデンウィークも終わり、市立は日常の装いを取り戻していた。僕は美術室で一人秋の文化祭に出す作品の下描きを始めようとしていた。この時期から始 めるのは早過ぎる気もするのだが、伊神さん曰く「事件を引き付ける体質」だそうなのでこの先、夏になるに従って何かあっても困るので早めに始める事にした のだ。百目鬼先生も
「まあ、葉山は部長なんだから好きにすれば良い」
 とお墨付きを貰っている。それに今週の末の土曜日は演劇部の定期公演があり、裏方として手伝いを頼まれているのだ。
 そんな事を考えていたら天童翠ちゃんが息を弾ませて美術室に飛び込んで来た。ちなみに彼女は苗字は違うが伊神さんの異母兄弟で、二人は仲が非常に良い。
「遅れてすみませんでした。掃除当番でしたので」
 赤い顔をして翠ちゃんは遅れた詫びを言った。
「いや、構わないよ。僕が早いだけだからね」
「何を描いてるのですか?」
 翠ちゃんから言えば、まさか秋の準備とは思わないのだろう。僕は先程の事を最初から説明する。すると翠ちゃん残念そうな顔をした。
「ええ! 十四日は都合が悪いのですか?」
 何の事だろう? 確か演劇部の手伝いの事は予め伝えてあったと思ったが……それに翠ちゃんは手伝いには入っていないから、その日は自由なはずだった。
「あ、手伝いは僕だけだから構わないんだよ」
「違うんです! 十四、十五と兄の大学で『五月祭』があるので、十四日なら兄の都合も良いので案内をしてくれると言うので先輩と一緒に行けたらと思っていたのです」
 そうか、『五月祭』と被るのか、今まで身近でそんな事が話題にもならなかったし、昨年は事件の解決で伊神さん自身もそれどころでは無かったので、五月祭が話題になるのは今回が初めてと言う事になると思ったのだ。
 十五日なら大丈夫だよ……と言いかけて、その日は柳瀬さんから用事を頼まれていた事を思い出した。
「残念だね……来年は都合つけるよ」
 そう言ってシマッタと思った。
「来年は先輩がいません!」
 頬を膨らませて怒った表情も中々可愛いが、先約があるのは仕方がない。
「兄弟水入らずで愉しめば良いと思うよ」
 それが気に入らなかったのか翠ちゃんは
「じゃあ、兄に案内して貰うのを十五日にして、十四日は私も美術部員として演劇部のお手伝いをします。来年の為にも今年参加していないと困りますから……それに……」
「それに?」
「いいです! その先は私事ですから」
 恐らく、柳瀬さんの事だったのでは無いかと思った。僕も柳瀬さんが来ない訳は無いと思っていたからだ。
「じゃあ、一緒に手伝おう。来年はきっと埋め合わせするから」
 僕のあてにならない言い訳を耳にした翠ちゃんはやっと笑顔を浮かべたのだった。

 金曜の放課後になると演劇部のOB達がバンを三台持って市立までやって来てくれた。この車に大道具や小道具、それに衣装やかつらを乗せて運んで行くのだ。
 演劇部の連中と一緒になって大道具を運び込む。舞台にセットして補修すべき箇所があれば補修するのが僕たち美術部の仕事なのだ。
 車に全てを乗せ終わると先輩OBが運転して市民ホールに向かった。残された在校生は自転車で後を追う。ちなみに翠ちゃんは車の助手席に乗せて貰った。まあ、あれだけの美少女だから声は掛かるだろうと思った。
 市民ホールに着いてみると、三台のうち一台が未だやって来ていなかった。衣装やかつらを乗せた車だった。市立を一番早く出た車だったはずだ。翠ちゃんも車から降りてスマホで時間を確認して
「遅いですね。私達の乗った車より早く着いていなければならないですよね」
 そう言って心配をしている。ミノも時計を確認して
「遅いな……まさか……」
 どうやらミノには何か思っている事があるみたいだった。その目つきで僕にも大凡判って来た。でも翠ちゃんは判らないようだ。
「ミノ先輩。何処に行ったのかアテがあるのですか?」
 ミノは言葉に困っている。そこで僕が
「もう少し待っていれば判ると思うよ」
 そう言って助け舟をだす。ミノはニヤッと笑い
「葉山にも判ったか、まあそうだよな」
 そんな事を言っていると、案の定車が到着した。その助手席から降りて来たのは、前演劇部長、柳瀬沙織さんだった。今日はライトグリーンのサマーセーターにアイボリーのカーデガンにミニスカートと言う出立ちだった。
「部長あいかわらずスタイルがいいなぁ~」
 待っていた他の三年生の部員からため息のような言葉が漏れる。その意見には賛同するが、一箇所間違っている。部長ではなく前部長だと言う事だ。
「電話したら丁度こっちに来る途中と言うから大学に寄って貰ったのよ」
 よく考えると衣装やかつらを乗せた車を運転していたのは柳瀬さんと同級の先輩で在校中は一切頭が上がらない人だったと思い出した。
「じゃあ、さっさと運び込もう」
 ミノが部員に言って資材の運搬が始まった。僕も大道具を一緒になって運び込んだ。各自の責任者が荷物の確認をする。ミノがホールの人と打ち合わせをするので中に入って行き、大道具は勿論、小道具、かつら、そして最後に衣装のチェックをしていた時だった。衣装係の女子が
「痛ッ!」
 と声を上げた。
「どうしたの?」
 柳瀬さん始め皆が注目をすると、指先から鮮血が滴り落ちている。
「衣装に仕付け針があったみたいです」
 別な生徒がその持っていた衣装を調べてみると衣装の裾の部分に針があったのだ。先ほどの生徒はそれに気が付かず挿してしまったようだった。
「おかしい! 昨日最後の稽古が終って衣装箱にその衣装を入れた時には針なんて無かった」
 別な部員が言う。今の演劇部の部員は柳瀬さんに憧れて入部した者が殆どで、女子が多い、部員数も多いのだが、何故か僕たち美術部の部員も何かあると借り出されるのだ。
「それは確かなのね?」
 柳瀬さんがその部員に確かめると、僕に近寄って来て
「ゆーくん、早速の出番よ。事件の現場に葉山くんありってね」
 そんな事を言いながら僕の事を横目で見ているのだ。こんな場所で困るのだが……
「事件って……仕付け針を取り忘れただけでしょう? 事件も何も……」
 僕がそこまで言った時だった。
「ああ、酷い! 衣装の縫い目が解かれている」
 仕付け針など無いと言った部員が衣装を広げて驚いていた。
「どうしたの今度は」
 柳瀬さんがその部員の所に行く。僕と翠ちゃんも後ろから眺めると先ほどの針が混入していた衣装が縫い目が解かれていて、その分が大きく穴が開いていた。
「この衣装はヒロインのよね?」
 柳瀬さんが尋ねると部員は
「そうです! ヒロインの着る衣装です。今から直ぐに縫い直します」
「そうね。それと平行して他の子も手伝って他の衣装にもイタズラがしてあるか調べてちょうだい!」
 さすが柳瀬さんだ。テキパキと指示を出す。そこにホールの人と打ち合わせが終ったミノが帰って来た。
「どうした? 何かあったのか」
 そこで僕は針の一件を説明した。柳瀬さんが僕たちの所にやって来て
「これはやはり事件じゃないかしら? 誰かが、わざとやったのよ。嫌がらせかも知れないわね」
 そう言って僕の耳元で
「あの娘が居るのがちょっと邪魔だけど。これは二人で解決してみたくなって来ない?」
 そう言って耳に息を吹きかけてニヤッと笑った。その表情と息を吹きかけられたので僕はゾクッとなってしまった。
 どうやら僕は柳瀬さんの術中に落ちてしまったみたいだった。

続く

にわか高校生探偵団の事件簿シリーズ、二次創作 「新しい騒動」

以前pixixvに投稿していてこちらにも載せました「にわか高校生探偵団の事件簿シリーズ」ですがDノベに投稿したところ好評で「続きを」と要望されましたので何とか書いてみました。一応暫く? 連載していくつもりです。出来は良くないと想います。雰囲気だけでも楽しんで戴ければ……

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
 新学期が始まり、何時もの平穏な市立がやって来た。翠ちゃんは、真面目に部活に出てくれている。
 部活動には本来「芸術棟」にある部室が使われるのだが例の事件の為に未だ閉鎖されており、仕方がないので美術室を借りているのだ。この部屋の監理は顧問の美術教師でもある百目鬼先生がしているのだが、あまり顧問としては熱心ではないので、
「葉山、任せるからちゃんと監理しておけよ」
 と一任されている。
 監理と言ってもこの部屋は美術の授業で使うので平時から開いていて、僕たち美術部員が下校時に教室にある鍵を掛けて帰るのが常となっている。
 昨年、この学校に五十年以上に渡って掛けられていた「呪い」のようなモノが解消して、この学校にも本当の意味で春がやって来たと思っていた。そこで、そ の事を記念して何か「花の絵」を描くことにしたのだ。勿論翠ちゃんも賛成してくれて、彼女は家から水仙と百合を持って来てくれたので部屋にあった花瓶に活 けてそれを描いているのだ。完成したら校舎内の廊下に掲示する事になっている。
 その日は夢中で描いていて周りの事が目に入らなかったのだが、いきなり肩を叩かれて飛び上がるほど驚いた。
「そんなに驚かなくてもいいでしょう。もう、変に敏感なんだから」
 声の主は、柳瀬さんだった。柳瀬沙織、僕より一学年上の人で、つい先月この学校を卒業していった人だった。演劇部の部長をしていて、舞台の上では輝くような魅力を解き放っていた。また放送の部長も兼ねていて、とても下級生に慕われていたのは言う間でもない。
「柳瀬先輩!」
 僕が何か口にする前に翠ちゃんが喜んで飛びついた。翠ちゃんは、僕より二学年上で、素晴らしい頭脳の持ち主の伊神さんの異母兄弟なのだ。ちなみに今まで この学校で起こった事件のことごとくを伊神さんが解決をしている。今は東京の国立大学に通う為に実家を空けていて、翠ちゃんがそこに下宿のような形で暮ら している。伊神さんのご両親は血の繋がっていない伊神さんや翠ちゃんを実の子供のように可愛がっているのは言うまでも無い事だ。
「大学の講義は大丈夫なのですか?」
「うん、今日は休講になったからこっちに様子を見に来たのよ。何か、ゆーくんの周りで事件でも起きてないかとね」
 全く、伊神さんでも翠ちゃんでもそして柳瀬さんでも、僕が事件を引きつけている見たいに思っている。それに関してはいい迷惑だと思っている。
「柳瀬先輩、本当は私と葉山先輩が仲良くなってるか、心配で見に来たのではないですか?」
 恐らく半分は本心なのだろう柳瀬さんの顔が僅かにひきつった。それを見逃す翠ちゃんではない
「ああ、や張り本当なのですね。柳瀬先輩と葉山先輩の間には、何か人に言えない秘密があるのですね」
 翠ちゃんの口調が一層険しくなる。何でこうなるのだろうか? 僕は確かに柳瀬さんに告白したが、あっさりかわされてしまったし、そもそもあれも彼女の本音だったかも今となっては怪しいと思っているのだ。
「あら、気になるのは当たり前じゃない。だって私とゆーくんは前世で結ばれていたのよ。今世でもそれは約束されている事だし」
 柳瀬さんも簡単には引き下がらない。それはそうだろう、この場で三つも下の後輩に言い負かされてしまっては立つ瀬がない。
「そもそも、葉山先輩がハッキリしないのが良くないのだと思います」
 翠ちゃんは方向を僕に向けて来た。僕は全く悪くない。何でいつもこうなるのだろう。
「ゆーくんも毎日こうやって私の目を盗んで翠ちゃんと仲良く部活度に励んでいるのね」
 柳瀬さんも矛先を僕に向けて来た。完全な思い込みだ。
「柳瀬さんも翠ちゃんも全くの誤解だよ。僕は僕でしかあり得ない」
 全く誤解を解くような言葉ではないが、咄嗟に出てしまった。
「柳瀬先輩、前は『葉山君』と呼んでいたのに、何故いきなり『ゆーくん』って馴れ馴れしく呼ぶようになったのですか?」
 翠ちゃんが柳瀬さんが僕の事を呼ぶ呼び方に疑問を持ってしまった。これは不味い。
「あら、いきなりじゃないわよ。去年の花火大会の時から呼んでいるわよ。あの夜の事は一生忘れないわ」
「ええ! 葉山先輩、一体何があったのですか? 私の知らない間に……」
 全く、柳瀬さんも何を言い出すやら……確かにあの晩に手を繋いだ事はあったが、それ以上の事は無かったはずだ。
「柳瀬さん。特別な事は無かったじゃないですか」
「あら、じゃあゆーくんはあれが一時の遊びだと言うのね?」
 ここまで来て僕はやっと柳瀬さんが、誤解を生むようにわざと言っているのが判って来た。
「そんな事言ってると、今度は本当に弄んじゃいますよ」
 言ってからシマッタと思ったが、もう遅かった。
「やはり葉山先輩は幾人も女の人を……」
 翠ちゃんが怪しい目をして僕に迫って来るし、柳瀬さんも
「ゆーくん。私はどんなに弄ばれても。、あなた一筋よ」
 そんな事を口にして笑っている。いよいよ絶対絶命だと思った瞬間
「葉山先輩! 美術部長の葉山先輩はいらっしゃいますか?」
 大きな声を出して数人の男女性生徒が美術室に雪崩れ込んで来た。
「どうしたの? 葉山は僕だけど」
 そう答えると今入って来た生徒の代表らしき者が
「大変なんです! 昨年百目鬼先生が描かれて学校の正面に飾られていた絵画に変な予告状が貼りつけられていたのです。直ぐに一緒に来て確認してください」
 何が起こったのかは理解出来たが
「君たちは?」
「清掃委員会の者です。校内の整理や備品の点検をしていた所だったのです」
 話だけでは実際に判らないので一緒に行くことにした。
「翠ちゃんはどうする?」
 声を掛けられた彼女は目を輝かせて
「勿論一緒に行きます。事件が起きたら兄の代りに私が解決します!」
 そのハリキリ様を見た柳瀬さんは
「あら、この私の前でよくそんな事が言えるわね。私とゆーくんで解決してみせるわ」
 そう言って口角を僅かに持ち上げた。
「兎に角行って見なければ判らないよ」
 僕は二人を伴って学校の正面玄関に飾られている百目鬼先生が描いた絵画の前に行ってみた。そこには校舎の上の方から学校全体を描いた絵が飾られていて、その額縁の下にA4の白い紙が貼られていた。
「なんて書いてあるの?」
 柳瀬さんが僕に尋ねると僕が読む前に翠ちゃんが声に出して読み始めた。
「予告! この絵画を近々一時的に預からせて戴く。心配ご無用。期日が来たら返却するものなり……なんでしょうね?」
 不思議がる翠ちゃんに柳瀬さんが
「これは単なる愉快犯ではないみたいね。ある時間だけこの絵がここ在ると困る者の犯行予告みたいね」
 柳瀬さんの言葉で僕は改めて絵を眺めてみた。それは、学校の上空から学校全体を鳥瞰図 のように描いた作品だった。よくある構図で珍しいものには見えな かった。絵に価値があるのではなく、ある時間だけこの絵がここの場所に在っては困る者の犯行予告だと僕も考えたのだった。

「にわか高校生探偵団の事件簿シリーズ」の二次創作  続き

昨日の続きです。
読みたいと言う奇特な方だけ次に進んで下さい。大したオチではありません。
このシリーズで重要なレギュラーの人物が登場します。

 それでは……
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「にわか高校生探偵団の事件簿シリーズ」の二次創作を載せてみます。

え~タイトル通りなのですが、「にわか高校生探偵団の事件簿シリーズ」とはなんぞや? とお思いの方にまず説明を致します。

主人公は、葉山くんと申しまして、下の名前は判っていません。千葉県蘇我市立高校に通う高校生です。
美術部に所属しているのですが、演劇部に良く手伝いに駆り出されます。
 その演劇部に居るのがこの物語のヒロイン柳瀬さん(一学年上)でして、彼女は葉山くんを愛妾扱いにしてる有り様です。
 そして不思議な事に彼の周りに次から次へと不思議な事件が発生します。難問に挑戦する葉山くんですが、事件の壁を乗り越えられません。
 それをいとも簡単に解決してしまうのが、
伊神先輩(二学年上)で、その見事さは唸るばかりです。

 お人好しで苦労症の葉山くんが周囲のためにと一生懸命駆け回ってがんばったあげく考えた推理と結論を伊神先輩が一瞬でひっくり返すと言うのがこのシリーズの醍醐味でもあります。


と言う関係をご理解の上お読み戴きたいと思っております。私の二次創作はそこまで出来良くありませんが……
 

※……これは、pixviで公開した時は別名で公開しています
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