え~今日はネタが無いのでお休みしようと思いましたが、それも芸が無いので、人の迷惑顧みずに自作の下手くそな小説を載せておきます。読む価値もありません。明日は何か有益な情報を載せますね。

これからやって来る「入学式」を題材に取った話です。

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「受け継がれるもの」

 中学を卒業してから、母校に来るのは実は初めてだ。理由は良く判らない。
 さしずめ「なんとなく」だがそこに若干の後ろめたさがあるのも事実だ。何故なのか? 考えて見た事があるが、良く判らない。
 強いて言えば、卒業する時に思っていた将来像と今が、かけ離れているからかも知れないと思い当たった。そうしたら、何とか言う作家が著書で「卒業した母校は卒業生は行ってはならない場所だ。何故ならそこは卒業生が訪れる場所では無いし、そこは在校生の場所 だからだ。だから卒業生はそこを訪れる時に若干の後ろめたさを味わうのだ」と書いてあったのを読んで「俺だけじゃ無かったのか」と思い安心をした。そうでなければ、今日俺はここには来なかったろう。たとえ娘の入学式でも……

 入学式の様子なんて大抵どこでも同じと相場は決まっている。
 校長の挨拶、生徒代表の歓迎の言葉。入学生代表の御礼の言葉、校歌斉唱……殆んど何処でも同じだが、今日は俺にとって若干違っていた。
 壇上で挨拶をしている校長は俺のいや、俺達同期なら特別良く知っている人物だったからだ。
 望月岩男、俺達はモッチャンと呼んでいた。俺達が悪い盛りだった頃の現役の教師で、しかも教務主任をしていた。
 あの頃…‥俺達は良くも悪くも真面目だった。いや、真面目というより一直線だったと思う。社会科の教師でろくに真面目に授業をしない教師を吊し上げ、授業をボイコットし、教師を教室に缶詰にして、真面目に授業するように交渉した、いいいや吊るし上げたのだ。
 モッチャンはそれを見て「納得の行く迄やりな」と俺達の味方をしてくれ、次が自分の持ち時間だったにも係わらず、俺達に時間をくれた。

 そうあの頃、俺達は必死だった。
 県立高の受験科目はあの頃は国。数、英、社、理の5教科だった。
 私立一本槍の連中は感じていなかったかも知れないが、公立を目指してる連中にとっては、1科目も疎かに出来ない、だから皆必死だったのだ。あの教師はそこが判っていなかった……

 式が終わり生徒達はそれぞれの教室に分かれて行く。
 俺は体育館の外に出て渡り廊下を歩いて行く我が娘を眺めていた。
「なんだ来ていたのか?」
 不意に後ろから声を掛けられた。振り向くとモッチャンだった。
「先生、校長がこんな所で油売っていてもいいんですか?」
「なあに、用があれば呼びに来るだろうて」
「確か、娘さんだったな」
 俺の横に立ちながらポケットからタバコを取り出して、少し先にある喫煙場所の灰皿に向かう。全く、中学校なら全面禁煙にしろよな……そう思いながら俺もポケットからタバコを取り出してそれに続く……
「いいんですか、タバコなんて生徒の前で吸って……」
「何言ってるんだ、お前の頃は教室に灰皿があった」
 確かに、そうだった。でも家で隠れてタバコを吸っていた奴はいただろうが、俺は高校卒業まで一本も口にしなかった。
 高校の卒業式の後で吸ったのが初めてだった……大して旨いとも思わなかった……
 モッチャンとは同期会の度に会って話しあっている。

 喫煙所で、俺はモッチャンと向かい合いながら
「さっき、俺らがボイコットした時のことを思い出していたんですよ」
「ああ、あの時のことか、今でも良く覚えているよ。なんて言っても、あんな事やらかしたのはお前達が最初で最後だったからな」
 鼻と口から煙を吐き出しながらモッチャンはそう懐かしむ様に呟いた。
「でしょうね。サボりたくてボイコットするなら兎も角、勉強したいからボイコットして教師を吊し上げるなんてのは普通は考えませんよね」
「でも、確か、あの年はエラく進学率が良かった。確か県で一番になったんじゃ無かったかな?」
 モッチャンはタバコの灰を落とすと2ふく目を口にした。
「どうして、あの時先生は俺達に賛成してくれたんですか?普通なら『ヤメロ』と言うハズですよね?」
 その俺の問いにモッチャンは煙を吐き出しながら
「次が丁度英語で俺の時間だったし、あのクラスは俺が担任だったから、いずれにせよ責任は俺に掛かって来る。ならば徹底的に納得の行くまでやらせようと思ったのさ」
「そうでしたか……俺たち信用されていたんですね……」
「信用というより信じていた、と言った方が正解に近いかな……処で今日奥さんは?確か同級生だったよな。式に呼んでくれたしな」
 言ってからモッチャンは「不味い事を訊いたな」という表情になった。
「もう2年が過ぎました。やっと馴れて来た処です。俺たち「父子家庭」なんですよ」
 モッチャンはバツの悪そうな顔になり
「そうか……病気だったのか……全く知らなかった」
 そうタバコを消しながら言った。
「進行性のガンでした。最後は俺に子供の事を頼むと言い残して亡くなりました」
 そう俺が言うとモッチャンは今度は2本目を出して火を点けて煙を吐き出し
「安らかな顔だったか?」
 そう訊くので俺は
「ええ、本当にガンのくせに安らかな顔でした」
「きっと奥さん、お前の事信じて無くなったのだろうな」
 モッチャンはまるで見ていた様な事を言うので
「何かあったのですか?」
 俺はそう聞き返した
「ああ、うちの奴も去年死んだ。交通事故だった、即死じゃなかったが、それで持病が悪化してな」
「そうだったのですか、全く知りませんでした」
「家族以外には誰にも言わず密葬にしたからな、まあ本人の遺言なんだがな。最後は俺を信じてくれたからな。お前の場合もそう思ったのさ」
 モッチャンは2本目を旨そうに吸い終わると灰皿に吸い殻を投げ入れた。
「ジュツ」という音がして火が消えたのを確認するとモッチャンは俺に
「俺もあと3年で退職だ。つまりお前の娘さんの卒業と一緒にこっちも教師生活卒業さ」
「宜しくお願いします」
 俺はそう言ってモッチャンに頭を下げた。
「ああ、学内の事は任せて欲しい」
 そう言って笑っていると、向こうからHRが終わったのだろう、娘がこちらにやって来た。
「行ってやれ!」
 そうモッチャンに言われ俺は娘の所に向かう。
「お父さん!」
 手を振る娘の姿に亡き妻の面影を見てしまうのは、情けない事だろうか?でも、俺は娘が健やかに育ってくれるのを信じるのだった。