「忘れられた者たち」
☆お題:今度の傑作 必須要素:一発ギャグ 制限時間:1時間 使用41分
売れない……
全く売れなくなってしまった。
俺は作家を生業として生きている人間だ。かってはベストセラーを幾つも書いて来た。書く傍から売れた時代もあったのだが、段々売上落ちて来て、とうとう全盛期の十分の一になってしまった。編集者は頭を抱え半狂乱になっている。俺だって何処かへ消えてしまいたいくらいだ。
「先生、次こそは傑作をお願いしますね」
そんな事、編集者に言われなくても判ってるつもりだ。毎夜遅くまでPCの前に座り必死にキーを叩くが、ありきたりの文章や物語しか浮かんで来ない。
今夜も考えあぐねていたら、部屋の隅に見慣れない男が立っていた。
「あんた誰? どうやってここに入ったんだ」
俺の言葉が聞こえたようで、男は
「大分苦しんでいるみたいだな。良ければ俺が助けてやろうか?」
そんなことを言うが信用出来ない。大体格好からして胡散臭そうな格好だ。
「信用出来ないと思ったな……まあいい。確かにいきなり現れて『助けてやろうか』なんて言っても信用しないだろう」
男は懐から何かを出して俺の目の前に出して見せた。それは一冊の本だった。
「何だこれ?」
「良く表題を読め。何と書いてある」
男に言われて表紙を見ると
『一発ギャグを有効に使う方法』と書いてあった。なんだ?
「その中には、古今東西の一発ギャグが納められている。その中の文言で文章を作ってみろ。内容なんて無くても人々は気に入って本を買ってくれるだろうさ。騙されたと思ってやってみな。お前の才能ならそれぐらいは出来るだろう」
男は、そう言うと、すーつと姿を消してしまった。何だったのだろうか? 俺は藁をも掴む思いだったので、その本を開いて見た。
すると、本当に世界で流行した一発ギャグが満載だった。一発ギャグというのは、その言葉だけなら面白くないのだが、あるシチュエーションになると極端に面白くなるものだ。だから、そのギャグだけを読んでも面白くも何ともなかった。
俺は、その本を開きながら、本に書かれているギャクを繋ぎ合わせて文章を書いてみた。例えば
「がちょ~んと言ったら龍角散」
「ダメよダメダメ、STAF細胞はあります! 200回以上成功しています!」
「集団的自衛権はありのままで」
とか書いてみたのだ。全く筋も何もあったもんじゃないが、ところが何故か編集者も気に入り、出版されてしまった。
すると何とこれがいきなり30万部のベストセラーになって増刷につぐ増刷で最終的には200万部を売り上げてたのだ。
これで俺の作家生命は保たれた。
そんなある日、家でくつろいでいると、あの男が現れた。
「よう、どうだい、上手く行ったろう」
「ああ、お陰で、助かったよ。でもあんた誰なんだい?」
「俺か? 俺は今まで一時だけ持て囃されて直ぐに捨てられた一発ギャグの霊の集合体だ。流行らなくなったとは言え一時は世間を席巻したんだ。それらが組み合わされば、このぐらいの力を出せるのよ。それをあんたに証明して欲しかったんだ。お陰で多くの一発ギャグが喜んでいるよ。それからもうこれは要らないだろう」
男は俺の手から、あの本を取ると霧のように消えてしまった。
俺は、あれから程々の売上を保っている。それは、あの本をコピーしておいたのだ。それで、あの時みたいに一気に一発ギャグを使わずに少しずつ文章に潜り込ませているのだ。だからその力でそこそこに売れているのだ。
俺だって、無名の頃から苦労して新人賞を貰って生き延びて来たんだ。ヘマはしない。それに一発ギャグ達だって俺が使ってやった方が喜ぶと言うものさ……じぇじぇじぇ~
了
☆お題:今度の傑作 必須要素:一発ギャグ 制限時間:1時間 使用41分
売れない……
全く売れなくなってしまった。
俺は作家を生業として生きている人間だ。かってはベストセラーを幾つも書いて来た。書く傍から売れた時代もあったのだが、段々売上落ちて来て、とうとう全盛期の十分の一になってしまった。編集者は頭を抱え半狂乱になっている。俺だって何処かへ消えてしまいたいくらいだ。
「先生、次こそは傑作をお願いしますね」
そんな事、編集者に言われなくても判ってるつもりだ。毎夜遅くまでPCの前に座り必死にキーを叩くが、ありきたりの文章や物語しか浮かんで来ない。
今夜も考えあぐねていたら、部屋の隅に見慣れない男が立っていた。
「あんた誰? どうやってここに入ったんだ」
俺の言葉が聞こえたようで、男は
「大分苦しんでいるみたいだな。良ければ俺が助けてやろうか?」
そんなことを言うが信用出来ない。大体格好からして胡散臭そうな格好だ。
「信用出来ないと思ったな……まあいい。確かにいきなり現れて『助けてやろうか』なんて言っても信用しないだろう」
男は懐から何かを出して俺の目の前に出して見せた。それは一冊の本だった。
「何だこれ?」
「良く表題を読め。何と書いてある」
男に言われて表紙を見ると
『一発ギャグを有効に使う方法』と書いてあった。なんだ?
「その中には、古今東西の一発ギャグが納められている。その中の文言で文章を作ってみろ。内容なんて無くても人々は気に入って本を買ってくれるだろうさ。騙されたと思ってやってみな。お前の才能ならそれぐらいは出来るだろう」
男は、そう言うと、すーつと姿を消してしまった。何だったのだろうか? 俺は藁をも掴む思いだったので、その本を開いて見た。
すると、本当に世界で流行した一発ギャグが満載だった。一発ギャグというのは、その言葉だけなら面白くないのだが、あるシチュエーションになると極端に面白くなるものだ。だから、そのギャグだけを読んでも面白くも何ともなかった。
俺は、その本を開きながら、本に書かれているギャクを繋ぎ合わせて文章を書いてみた。例えば
「がちょ~んと言ったら龍角散」
「ダメよダメダメ、STAF細胞はあります! 200回以上成功しています!」
「集団的自衛権はありのままで」
とか書いてみたのだ。全く筋も何もあったもんじゃないが、ところが何故か編集者も気に入り、出版されてしまった。
すると何とこれがいきなり30万部のベストセラーになって増刷につぐ増刷で最終的には200万部を売り上げてたのだ。
これで俺の作家生命は保たれた。
そんなある日、家でくつろいでいると、あの男が現れた。
「よう、どうだい、上手く行ったろう」
「ああ、お陰で、助かったよ。でもあんた誰なんだい?」
「俺か? 俺は今まで一時だけ持て囃されて直ぐに捨てられた一発ギャグの霊の集合体だ。流行らなくなったとは言え一時は世間を席巻したんだ。それらが組み合わされば、このぐらいの力を出せるのよ。それをあんたに証明して欲しかったんだ。お陰で多くの一発ギャグが喜んでいるよ。それからもうこれは要らないだろう」
男は俺の手から、あの本を取ると霧のように消えてしまった。
俺は、あれから程々の売上を保っている。それは、あの本をコピーしておいたのだ。それで、あの時みたいに一気に一発ギャグを使わずに少しずつ文章に潜り込ませているのだ。だからその力でそこそこに売れているのだ。
俺だって、無名の頃から苦労して新人賞を貰って生き延びて来たんだ。ヘマはしない。それに一発ギャグ達だって俺が使ってやった方が喜ぶと言うものさ……じぇじぇじぇ~
了