もう今度は必ず成功させるんだから! あ、「成功」じゃなくてこの場合は「性交」ね! 兎に角、若い子が年寄りみたく電気毛布なんて使ってるなんて思わないじゃない。でもね、相棒のインキュバスに言ったら
『若い男子は体脂肪が少ないから寒がりが多い』
 なんて言っていたわ。それもそうかと思ったのよ。それでね、今度は間違いのないように一緒に食事をすることにしたの。場所は私の部屋。料理は何が良いか考えたのだけど、未だ少し寒いから鍋物が良いと思うの。鍋なら二人でつつきながら会話も弾むし、何より私が前かがみになって胸を大きく開ければ、健太くんの視線は当然胸に行くでしょう。
 それに鍋ならお酒は付き物。インキュバスに悪魔界から特性のお酒を持って来て貰ったのよ。彼だって必死よ。私が性交しなければお宝が手に入らないんだからね。協力して貰ったのよ。
 鍋は何が良いか考えたのよ。でもここはオーソドックスに寄せ鍋にしたわ。寄せ鍋なら色々な物が入っているから、悪魔界の食材が入っていても判らないと思うの。特に「惚れエリンギ」とか最高よ。食べたら体が火照って来て我慢出来なくなるのよ。それと「恋恋豆腐」なんてのも良いわね。我慢できなくなること請け合いよ。楽しみだわ。さあ支度しなくちゃ。

 今日の僕は講義が午前中には終わってしまうんだ。だからそれからバイトのシフトが入っていて、終わるのが午後7時過ぎなんだ。普段だとお腹ペコペコで途中で何か買ってしまうんだけど今日は特別。だって隣の佐久さんと一緒に夕食を採る事になっているんだ。これ最高でしょう。綺麗で可愛くて巨乳な人が僕と二人だけで夜を過ごすんだよ。これがチャンスと言わなくて何だろうか。僕は特別肉食系では無いけど草食系でも無い。そっちはごく普通の感じだと自分では思ってる。エッチな本も買うし、AVだって借りちゃう。大学に行けば講義の合間に可愛い子を探してる事もあるしね。そこら辺りに居る極普通の大学生だと自分では思ってる。
 だから、あんな素晴らしい佐久さんが隣と言うだけで僕に優しく親切にしてくれるのが不思議なんだ。もしかして、佐久さんは僕みたいなのが好みなんだろうか? ならばこのチャンスをモノにしなくてはならない。
「それじゃお先に失礼します」
 僕はバイトの切り上げ時間となり、帰る支度を始めた。支度と言っても制服を脱ぐだけなんだけどね。そして帰ろうとすると店長が
「山縣君悪いんだけど、次の交代の子が遅れるそうなんだ。頼むから来るまでお願い出来ないかな?」
 何という事だろうか、よりによって今日残業をするなんて! アンラッキーだと思った。こんな事なら佐久さんの連絡先を訊いておくんだった。渋々僕は制服をもう一度着た。
 イライラ仕事すること一時間余り。やっと交代が出来た。僕は速攻で着替えて「お疲れさま」と走りながら口にした。皆が驚いて口を開けて見ていた。でもそんなの構わない。早く帰らないと佐久さんが僕の帰りを待っているのだから。
 運悪く途中の踏切に引っかかってしまった。この踏切は一旦閉まると長いんだ。僕はスマホの時計を見ながらイライラして足を動かしていた。
 どのぐらいだろうか、やっと踏切が開いたので僕はダッシュで走り出す。そんなこんなで部屋に着いたのは八時半過ぎだった。部屋に帰り着替えるとチャイムが鳴った。出ると佐久さんだった。
「おかえりなさい。支度出来ていますよ。一緒に食べましょう。今日は鍋にしたんです」
「そうなんですか! 僕、鍋好きなんですよ。嬉しいなぁ」
 これは本心だった。一人暮らしをしていれば鍋物などは作らない。だから鍋物を食べるのは久しぶりだった。
 佐久さんの後を付いて行く。
「さあどうぞ」
「おじゃまします」
 よく考えたら佐久さんの部屋に入るのは始めてだった。部屋の造りは僕の所と同じだが、ここは角部屋なので本当は壁があるところに窓がある。夜だから判らないが昼だったら開放的なんだろうと思った。
 部屋の方に行くと炬燵の上のテーブルにカセットコンロが置いてあり、その上に大きな土鍋が乗っていた。横には大きな皿に色々な具材が乗っていた。鍋からは、早くも美味しそうな香りを出していて、具材が煮えていた。
「寄せ鍋ですか!」
「はい。お好きですか?」
「勿論です!」
 というより、佐久さんの作ったものなら何でも食べるつもりだった。
「さあ座ってください」
 そう言われて佐久さんが座布団を示した所に座る。佐久さんが向かい側に座るのかと思ったら何と、隣と言うか角というか、つまり九十度横に座ったのだ。近い! 何だか佐久さんが積極的な感じがしたが
「ここの方が食材を入れやすいものですから」
 そうかそれが理由か。少しガッカリしたけど佐久さんが杓子で僕の取り皿に煮えた具材を入れてくれる。そして
「健太さんはお酒は?」
「多少なら」
「日本酒も?」
「はい。好きです」
「それは良かった。田舎から地酒を送って来たんです」
「地酒ですか! それは嬉しいですね」
 佐久さんは冷蔵庫から五合瓶を出して僕に見せた
「これなんですよ」
「『薔薇錦』ですか? 変わった名前ですね」
 そんな事言ったけど、佐久さんが呑ませてくれるなら何でも良かった。佐久さんは小さなグラスを出して来て、僕に持たせてくれた。
 佐久さんが立ち上がる度に僕の目の前に佐久さんのミニスカートから伸びた美しくセクシーな脚に目が行ってしまう。素足が眩しかった。
 トクトクとお酒が注がれて佐久さんが
「呑んでみてください」
 そう言うので僕はグラスを口に運んで「薔薇錦」を口に入れて飲み込んだ。果実のような香りと共に爽やかな感じが口と喉に広がった。美味しい! こんな酒は初めてだった。
「これ美味しいですね。こんなお酒初めて呑みました」
「そうですか。それは良かったです。さ、もっと」
 言われて二杯目を口にする。本当に美味しい。
「鍋もどうぞ」
 そうだった、せっかくとよそってくれたのに冷めてしまう。僕は取り皿を左手で持って、エリンギと思われるキノコを口にした。普通のエリンギより旨味が強く食感が良い。これは堪らないと思った。
 それからお酒も鍋もドンドン進み。僕は少し酔いが回って来た感じがした。気がつくと佐久さんが僕の隣に座っている。僕の肩と佐久さんの肩が重なってる。佐久さんのブラウスの胸が開いていて豊かな胸の谷間が奥の方までハッキリと見えた。僕の視線は釘付けになった。
「あれ? ここ気になります?」
 佐久さんがそう言って自分の胸の谷間を指さした
「あ、はい。正直に言うと非常に気になるんです」
 酔ってるせいか言葉尻が少しおかしかった。
「もしかして健太さんは私の躰を見たいのですか?」
 え、今何と言ったのだろうか? 聞き間違いで無ければ「躰を見たいのですか」と言ったと思った。こんな時は何て返事をしようか。
「あ、出来れば……」
 そんな返事しか出来なかった。でも佐久さんは
「どうしようかなぁ。私も女だから健太さんの前でハダカになるのは少し恥ずかしいけど健太さんが望むならば……」
 これはチャンスだ。このチャンスを逃してはならないと思った。
「正直言います。佐久さんの何も身に付けていない姿が見たいです」
 言ってしまった。とうとう思いの丈を口にしてしまった。多分駄目だろうな。良くても「そんな冗談は駄目ですよ」なんて事になるのだろうと考えていたら
「健太さんが望むなら、私生まれたままの姿になります」
 そう言ってブラウスのボタンを外し始めたのだった。