僕の隣に来た佐久さんは
「この温泉は体に良いらしいですよ」
 そんな事を言って僕に笑顔を見せてくれている。僕はバスタオルでも隠せない深い胸の谷間に視線が釘付けになってしまってる。
「ここは湯船にタオルを入れては駄目なのですよね。バスタオルを取っても良いけど、そうすると健太さんに裸を見られちゃうから、少し恥ずかしいです」
 佐久さんはそんな事を言ってバスタオルを取る仕草をして見せた。
「正直言います。僕、佐久さんの裸を見たいです」
 言ってしまった。とうとう心の中の想いを口に出してしまった。後悔をしてると、何と佐久さんは肩まで湯に浸かると、ゆっくりとバスタオルを自分の体から左右に解き放った。僕は興奮状態でのぼせそうだった。でもばっちりと佐久さんの肢体が拝めると思ったのだが、佐久さんの体はお湯の中に隠れてしまって湯気の影響もありよく見えない状態だった。でも僕の興奮状態はピークを迎えようとしていた。だって、手を伸ばせば、そこに念願の佐久さんの肢体が手に入るかも知れないのだ。豊かな胸の感触も確かめられるかも知れない。
 そんな事を考えたのが良くなかったのか、僕は段々と息が苦しくなって来ていた。どうしたんだろうか、目の前が少しずつ暗くなっていく……意識が遠くなるのを感じた……。

 ここは健太くんの夢の中、設定は何処かひなびた温泉にしたわ。勿論混浴よ。健太くんが入っている所にわたしが入って行き、散々じらせて健太くんがわたしを襲う感じで精液を頂こうと思ってるの。きっと上手く行くわ。
 露天風呂の引き戸を開けると湯気の向こうに健太くんが入っていたわ。ここまでは計画通り。
「あら、健太さん?」
 なんてわざとらしいく声を掛けると彼は
「あれ佐久さんですか? どうしてここへ?」
 そんな事を言っているわ。わたしは
「あら、わたしがここに来てはおかしいですか? そんな事よろしいじゃ無い。わたし健太さんと二人でお風呂に入りたかったの」
「いえ、余りにも突然だったもので驚いているところです」
 彼がそう言って少し戸惑っているのでわたしは
 「そちらに行っても宜しい?」
 そう言って健太くんの返事には構わずに隣に座った。痛いほどの視線を感じるわ。ふふふ悪魔冥利につきるというものだわ。
 わたしはここでバスタオルを脱ぐ仕草を見せると、健太くんの興奮は最高潮になってるみたいだった。もう少しだわ。ここでわたしの裸を見せれば一発で落ちると確信したの。でもここでわたしの想像の斜め上を行く展開になってしまったのよ。
 何と健太くんが興奮し過ぎて、のぼせてしまったの。意識を無くしてぐったりとしてしまったのよ。幾ら温泉に入ってるとは言え、ここは夢の中よ。実際に温泉に入ってる訳じゃ無いのに……。
 そこまで考えて、わたしは夢の中で健太くんを湯から出して洗い場に横にして、現実の世界に戻って来たの。要するに健太くんの部屋ね。そうしたらこの子、若いのにベットに電気敷毛布なんて入れているのよ。しかも温度設定が最高になってるの。どうやらわたしの媚薬入の肉じゃがを食べたせいで、温度設定を最高にしたまま眠ってしまったみたい。敷毛布の温度と実際の興奮状態。それも夢の中なので調整が出来ないから、のぼせてしまったみたいね。
 わたしは仕方なく電気敷毛布のスイッチを切って、布団を剥いで彼の体を冷やす事にしたの。春とは言え未だ夜中は冷えるから直ぐに正気に戻ったみたいなので、わたしは今夜は諦めて部屋に帰ったのよ。幸いわたしは部屋の壁やドアをすり抜ける事が出来るからね。次のチャンスに賭けるつもりよ!

 虚ろな意識の中で僕は目が覚めた。時計を見ると未だ夜中だった。確か夢の中で佐久さんと一緒に温泉に入っていたはずだった。もう少しというところで意識が無くなってしまった。夢の中でのぼせたのだ。惜しかったが、冷静になって考えると少しおかしい。夢で何故のぼせるのだろうか、と考えて僕が寒がりなので電気敷き毛布を使っていた事を思い出した。僕は布団に入った時に寒さを感じないように、最初の温度設定を最高にしておくのだ。そして布団に入った時に温度設定を下げる事にしているのだ。でも昨夜は布団に潜り込むと直ぐに眠ってしまったのだった。
『そうかだからのぼせてしまったのか』
 そう納得したのだが、現実に敷毛布の温度設定を見て見ると「切」になってるのだった。
『誰かがこの部屋に入って来てスイッチを切ったのだ。それは誰だろうか』
 僕はそう考えた。
 ベットから抜け出して部屋の入り口を確かめると鍵は掛かっていた。でも部屋の気配には、さっき迄誰かがこの部屋に居た感じなのだ。
 まさか佐久さんが居てくれたのだろうか? まさか、それは無いと思った。僕の気のせいだったのだろうか? 現実にはそうなのだろう。僕はそう結論した。
 翌朝、大学に行く前に佐久さんが部屋にやって来た
「おはようございます」
「あ、おはようございます。朝からどうしたのですか?」
 僕の質問に佐久さんは
「実は厚かましいのですが、お願いがあってやって来ました」
 お願いとは何だろう。僕はそんな事より佐久さんの格好ばかり見ていた。だって今朝の彼女は薄いブラウスにミニスカートという出で立ちでブラウスは薄い花柄が入っているので直接は透けて見えないが肩の所にブラジャーの紐は確認出来なかった。今朝もノーブラだと思った。ミニスカートから伸びた脚は少しむっちりしているがスラリとして綺麗な曲線を描いていた。
『堪らないな』
 頭の中でそう思っていたら
「実は田舎から出て来る時に実家の親が食べる事に困らないように、色々な食材を送って持たせてくれたのですが、流石に一人では食べきれないので、今夜遅くならなかったら一緒に夕食を食べませんか」
 何と! 彼女の方から、そんな有り難い事を申出てくれるなんて……僕は幸せ者だ。
「ありがとうございます。昨日の肉じゃがの鍋も返して無いのに」
「肉じゃが、お口に合いました?」
「はい、正直生まれて一番美味しかったです!」
「そうですか。それは良かったです。健太さんが喜んでくれてわたしも嬉しいです。では今夜お誘いに伺いますから、よろしくお願いします!」
「ありがとうございます!」
 僕はそう言ってドアを閉める佐久さんを何時までも見つめていた。あわよくば夢の中なんかじゃなく、現実に佐久さんと深い仲になれるかも知れないと思うのだった。