僕の名は山縣健太。某都内の大学に通う学生で、一人暮らしを始めて一年が過ぎようとしている。
 僕の住んでいるアパートは二階建てで全ての部屋がワンルーム形式となっている。六畳の洋間に小さな台所とバス・トイレが付いている。窓の外は小さなベランダがあり、そこに洗濯物を干すようになっている。ちなみにこのベランダに洗濯機も置いてある。
 要するに一人暮らし向きのアパートなんだ。築二十年以上経っているのでこの辺りにしては家賃が安い。一階二階共々五部屋があり二階の端にある僕の部屋の隣以外は埋まっていた。
 ここは都心から私鉄で二十分ほどの所にあり、駅からここまでは再開発されたらしく新しいマンションやアパートが立ち並んでいる。僕の住んでるアパートは駅から徒歩で十分ほどなのでそれらを通り過ぎた所にある。だから家賃も安いのだと思ってる。
 僕の通う大学は駅の反対側にあるので僕は大学には自転車で通っている。貧乏大学生には自転車は必需品だ。まあこれも近所の自転車屋さんで中古で買ったのだけどね。
 講義のない日はバイトに通っている。親からの仕送りも充分ではないから、バイトをしないとやって行けない。
 そんな僕の日常に変化が起きた。僕の隣に誰かが引っ越して来たのだ。それは突然で、春になり新学期が始まった頃だった。バイトから帰って来て一休みしてる時に部屋のチャイムが鳴った。ちなみに、このアパートにはインターフォンなどというものは無い。僕の部屋のチャイムを鳴らす者などは殆どいない。友人なぞは直接ドアを叩いて「いるか~」と叫ぶからだ。さしずめセールスか何かだと思ってドアを開けた。速攻で断ろうと思ってドアを開けた。でも、そこに居たのはセールスの人ではなかった。
「夜分、すいません。この度隣に越して来た『佐久』(さきゅう)という者です。ご挨拶に伺いました。今後よろしくお願いします!」
 そう言って、その人はタオルの包を差し出した。
「あ、山縣と申します。こちらこそよろしくお願いします!」
 そう返事をして前を見ると、二十代前半の美人が立っていた。色が白く、透き通るような肌をしていて、髪は艶のある黒髪が肩の下まで伸びていた。涼やかで大きめな目が微笑んでいた。そして赤く小さな口から
「わたし、東京は初めてなものですから、色々と教えてくださいね」
 そう言ってニコッと笑った。正直、かわいいと思った。少し年上みたいだが、そんなのを感じさせなかった。そして持っていたタオルの包を差し出した
「ほんのお印です」
 僕は慌てて
「あ、ありがとうございます。ご丁寧にすみません」
 そう言って受け取ろうとすると、僕の手を握って来たのだ。面食らう僕に
「色々とご迷惑おかけすると思いますがよろしくお願いします!」
 もう一度そう言って微笑んだのだった。柔らかい手の感触を残して顔を上げると、春物の体に密着した緑のセータの下には豊かな膨らみがあった。思わず目が行ってしまった。美人で可愛くて巨乳。何と素晴らしい人が隣に越して来たのだと僕は嬉しくなったのだった。
 このアパートの住人は大学が近いせいもあり、学生が半分を締めている。その他はサラリーマンが二名で残りの三名はどうやら水商売に勤めているような女性だ。帰って来るのが遅いのでそう思った。だから隣に越して来た佐久さんも、そのたぐいだと思ったのだが、どうやら外れていたみたいで、彼女は夜遅く帰って来たりはしなかった。
 ある日のこと、大学から帰って来て何を食べようか考えていたら、部屋のチャイムが鳴った。出て見ると隣の佐久さんだった。手には小さな鍋を持っていた。
「こんばんは~。実はお願いがあって来ちゃいました」
 彼女と会話するのは二度目だが、こんな言い方をされれば悪い気はしない。
「はい。どんな御用でしょうか?」
「実は、今日寒いので肉じゃがを作ったのですが、今まで一人分なんて作ったことが無いので作りすぎてしまいまして。もし良かったら食べて頂きたいのですが……」
 何と幸運な。肉じゃがなんて一人暮らしをしてから、まともに食べたことなんて無かったので有り難く頂戴する。
「こちらこそありがとうございます。本当に助かりました」
 そう言って受け取ろうとすると
「溢すと大変なので、良かったらこのままガス台に置いて行きます」
 そう言ってくれたので
「そうですか、ありがとうございます」
 そう言って彼女を部屋に上がらせた。彼女は慎重に鍋を持って台所に上がって来た。ちなみにこのアパートの造りは、ドアを開けると台所があり、ガラス戸で仕切られて六畳に繋がっている。入って右側にはバス・トイレがあるのだ。
 彼女はゆっくりと足を運んでいる。僕は彼女の後ろから付いて行ったのだが、これが眼福ものだった。と言うのもこの日の格好だが、上はやはり体に密着したVネックの山吹色のセーターで、豊かな胸が彼女が歩く度に不規則に揺れているし、下はデニムのスリムなのでやはり体の線が顕になっている。素晴らしかったのは彼女のヒップラインで、豊かな曲線を描いていたし、お尻もキュッと持ち上がっていて日本人離れしていた。少し外人の血が入っているのかも知れないと思った。よく見るとクオーターかも知れないと思った。それぐらい少しエキゾチックだった。
 僕は歩く度に揺れる胸とお尻に視線が釘付けだった。こんな素敵な人が僕に親切にしてくれる……。そう思うだけで胸が高鳴るのを感じるのだった。
「上手く置けました。美味しくないかも知れませんが……」
 佐久さんはそう言って僕の方に振り返った。その時胸の揺れが普通では無かった。僕は心の中で
『もしかしてノーブラなのかな?』
 そう思ってしまった。そうすると、あの薄いセーターの下には豊かな……。そう思うと表情が崩れてしまった。
「貰って頂けて本当に良かったです。また何かありましたらお持ちしますね」
 佐久さんはそう言ってお辞儀をした。その時にセーターの胸の開いた所から彼女の胸の谷間が顕になった。僕の視線はそこに釘付けになる。
「それでは失礼します」
 そう言って佐久さんは帰って行ったが、僕はその場に暫く佇んでしまった。