え~中日新聞に投稿した拙作ですが、落選は間違い無いので、ここでひっそりと公開します。
まず、最初に

「素麺」

 衣替の季節になり半袖が心地よくなると、夏の太陽が顔を覗かせる。その頃から母は良くお昼に素麺を茹でてくれた。竹で編んだザルに山盛りになるほど茹でてくれた。

 わたしや弟は、その中の赤や緑の色の素麺を取られない様に真っ先に食べてから残りの白いのを食べたものだ。色のついたのを何本食べたか何時も自慢しあっていた。

 子供のうちは葱が辛いから嫌いだったが、いつの間にか好きになった。
 玉子焼きも胡瓜もさくらんぼも無かったけれど……思い出す。
 残って茹で過ぎた素麺は夕食に形を変えて出て来た。その変身した素麺もどきをウンザリしながらも食べていた。

 今年も夏が来る……母の新盆には素麺を茹でてあげようと想った。


「初鰹」

 5月も連休が終ると、新緑が目に眩しくなる。これから梅雨に入るまでが一年で一番過ごしやすい。

「目に青葉、山ほととぎす、初がつお」と言う俳句がある。まさに今の時期を詠んだ句だろう。
 
昔からこの時期になると鰹が食べたくなる。それもたたきでは無く刺し身でだ。思い立つと我慢出来なくなったので、早速スーパーに買いに行く。綺麗に盛られたのもあるが、ここは柵になったのを買ってきてこの日の為に買ったマイ刺身包丁で切って食べたい。

「病膏肓に入る」と言う諺通りだと自分でも呆れる。

 江戸時代の人は和辛子をつけて食べたそうだ。それに倣って自分もそうしてみる。
 
古風な味がして、少しだけ昔の人になった気がした。


この二作を一応公開してみました。
落ちたらまた載せます!