え~新しいエピソードです。ミステリー書けない者が学園ミステリーの二次創作を書いてるのもおかしいのですが、グデグデにならないように進めたいと思います。多分、少し長めです。

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 ゴールデンウィークも終わり、市立は日常の装いを取り戻していた。僕は美術室で一人秋の文化祭に出す作品の下描きを始めようとしていた。この時期から始 めるのは早過ぎる気もするのだが、伊神さん曰く「事件を引き付ける体質」だそうなのでこの先、夏になるに従って何かあっても困るので早めに始める事にした のだ。百目鬼先生も
「まあ、葉山は部長なんだから好きにすれば良い」
 とお墨付きを貰っている。それに今週の末の土曜日は演劇部の定期公演があり、裏方として手伝いを頼まれているのだ。
 そんな事を考えていたら天童翠ちゃんが息を弾ませて美術室に飛び込んで来た。ちなみに彼女は苗字は違うが伊神さんの異母兄弟で、二人は仲が非常に良い。
「遅れてすみませんでした。掃除当番でしたので」
 赤い顔をして翠ちゃんは遅れた詫びを言った。
「いや、構わないよ。僕が早いだけだからね」
「何を描いてるのですか?」
 翠ちゃんから言えば、まさか秋の準備とは思わないのだろう。僕は先程の事を最初から説明する。すると翠ちゃん残念そうな顔をした。
「ええ! 十四日は都合が悪いのですか?」
 何の事だろう? 確か演劇部の手伝いの事は予め伝えてあったと思ったが……それに翠ちゃんは手伝いには入っていないから、その日は自由なはずだった。
「あ、手伝いは僕だけだから構わないんだよ」
「違うんです! 十四、十五と兄の大学で『五月祭』があるので、十四日なら兄の都合も良いので案内をしてくれると言うので先輩と一緒に行けたらと思っていたのです」
 そうか、『五月祭』と被るのか、今まで身近でそんな事が話題にもならなかったし、昨年は事件の解決で伊神さん自身もそれどころでは無かったので、五月祭が話題になるのは今回が初めてと言う事になると思ったのだ。
 十五日なら大丈夫だよ……と言いかけて、その日は柳瀬さんから用事を頼まれていた事を思い出した。
「残念だね……来年は都合つけるよ」
 そう言ってシマッタと思った。
「来年は先輩がいません!」
 頬を膨らませて怒った表情も中々可愛いが、先約があるのは仕方がない。
「兄弟水入らずで愉しめば良いと思うよ」
 それが気に入らなかったのか翠ちゃんは
「じゃあ、兄に案内して貰うのを十五日にして、十四日は私も美術部員として演劇部のお手伝いをします。来年の為にも今年参加していないと困りますから……それに……」
「それに?」
「いいです! その先は私事ですから」
 恐らく、柳瀬さんの事だったのでは無いかと思った。僕も柳瀬さんが来ない訳は無いと思っていたからだ。
「じゃあ、一緒に手伝おう。来年はきっと埋め合わせするから」
 僕のあてにならない言い訳を耳にした翠ちゃんはやっと笑顔を浮かべたのだった。

 金曜の放課後になると演劇部のOB達がバンを三台持って市立までやって来てくれた。この車に大道具や小道具、それに衣装やかつらを乗せて運んで行くのだ。
 演劇部の連中と一緒になって大道具を運び込む。舞台にセットして補修すべき箇所があれば補修するのが僕たち美術部の仕事なのだ。
 車に全てを乗せ終わると先輩OBが運転して市民ホールに向かった。残された在校生は自転車で後を追う。ちなみに翠ちゃんは車の助手席に乗せて貰った。まあ、あれだけの美少女だから声は掛かるだろうと思った。
 市民ホールに着いてみると、三台のうち一台が未だやって来ていなかった。衣装やかつらを乗せた車だった。市立を一番早く出た車だったはずだ。翠ちゃんも車から降りてスマホで時間を確認して
「遅いですね。私達の乗った車より早く着いていなければならないですよね」
 そう言って心配をしている。ミノも時計を確認して
「遅いな……まさか……」
 どうやらミノには何か思っている事があるみたいだった。その目つきで僕にも大凡判って来た。でも翠ちゃんは判らないようだ。
「ミノ先輩。何処に行ったのかアテがあるのですか?」
 ミノは言葉に困っている。そこで僕が
「もう少し待っていれば判ると思うよ」
 そう言って助け舟をだす。ミノはニヤッと笑い
「葉山にも判ったか、まあそうだよな」
 そんな事を言っていると、案の定車が到着した。その助手席から降りて来たのは、前演劇部長、柳瀬沙織さんだった。今日はライトグリーンのサマーセーターにアイボリーのカーデガンにミニスカートと言う出立ちだった。
「部長あいかわらずスタイルがいいなぁ~」
 待っていた他の三年生の部員からため息のような言葉が漏れる。その意見には賛同するが、一箇所間違っている。部長ではなく前部長だと言う事だ。
「電話したら丁度こっちに来る途中と言うから大学に寄って貰ったのよ」
 よく考えると衣装やかつらを乗せた車を運転していたのは柳瀬さんと同級の先輩で在校中は一切頭が上がらない人だったと思い出した。
「じゃあ、さっさと運び込もう」
 ミノが部員に言って資材の運搬が始まった。僕も大道具を一緒になって運び込んだ。各自の責任者が荷物の確認をする。ミノがホールの人と打ち合わせをするので中に入って行き、大道具は勿論、小道具、かつら、そして最後に衣装のチェックをしていた時だった。衣装係の女子が
「痛ッ!」
 と声を上げた。
「どうしたの?」
 柳瀬さん始め皆が注目をすると、指先から鮮血が滴り落ちている。
「衣装に仕付け針があったみたいです」
 別な生徒がその持っていた衣装を調べてみると衣装の裾の部分に針があったのだ。先ほどの生徒はそれに気が付かず挿してしまったようだった。
「おかしい! 昨日最後の稽古が終って衣装箱にその衣装を入れた時には針なんて無かった」
 別な部員が言う。今の演劇部の部員は柳瀬さんに憧れて入部した者が殆どで、女子が多い、部員数も多いのだが、何故か僕たち美術部の部員も何かあると借り出されるのだ。
「それは確かなのね?」
 柳瀬さんがその部員に確かめると、僕に近寄って来て
「ゆーくん、早速の出番よ。事件の現場に葉山くんありってね」
 そんな事を言いながら僕の事を横目で見ているのだ。こんな場所で困るのだが……
「事件って……仕付け針を取り忘れただけでしょう? 事件も何も……」
 僕がそこまで言った時だった。
「ああ、酷い! 衣装の縫い目が解かれている」
 仕付け針など無いと言った部員が衣装を広げて驚いていた。
「どうしたの今度は」
 柳瀬さんがその部員の所に行く。僕と翠ちゃんも後ろから眺めると先ほどの針が混入していた衣装が縫い目が解かれていて、その分が大きく穴が開いていた。
「この衣装はヒロインのよね?」
 柳瀬さんが尋ねると部員は
「そうです! ヒロインの着る衣装です。今から直ぐに縫い直します」
「そうね。それと平行して他の子も手伝って他の衣装にもイタズラがしてあるか調べてちょうだい!」
 さすが柳瀬さんだ。テキパキと指示を出す。そこにホールの人と打ち合わせが終ったミノが帰って来た。
「どうした? 何かあったのか」
 そこで僕は針の一件を説明した。柳瀬さんが僕たちの所にやって来て
「これはやはり事件じゃないかしら? 誰かが、わざとやったのよ。嫌がらせかも知れないわね」
 そう言って僕の耳元で
「あの娘が居るのがちょっと邪魔だけど。これは二人で解決してみたくなって来ない?」
 そう言って耳に息を吹きかけてニヤッと笑った。その表情と息を吹きかけられたので僕はゾクッとなってしまった。
 どうやら僕は柳瀬さんの術中に落ちてしまったみたいだった。

続く