2014年04月

「超能力高校生はパフェがお好き」 第30話

第30話 「新城の出生」

新城は優しく康子に言うとさらに
「僕が向こうへ行くのは構わないが、その前にすることがある」
そう言うと自分の能力「支配」を発動させた。
一瞬で新城の結界に周辺が入った事が確認される。
「いま、この辺、そう周囲10㌔四方を僕の結界に入れた。大体西高の生徒の殆んどはこの結界の中で生活をしていると思う。今から、デートクラブの被害者の記憶を消させて貰う。勿論この事件の記憶だけを消す」
それを聞いた男たちは
「まさしく王のちからだ。間違い無い、行方不明になった王子だ」
そう言って新城の足元にひれ伏す。
「そんな事はやめてくれ。君たちの世界は封建制なのかい?」
新城はそう言って笑ってる。
「大体数はつかめた感じだから、今からその人達の記憶を操作する」
そう新城が言ったかと思うと目をつぶって意識を集中させた。
次の瞬間何かが変わったと鈴和も康子も美樹もサツキもそして男たちも感じていた。
「これで、この結界に居た事件の被害者は事件の記憶を消されて何も覚えていなくなった。
事件は無かった事になった」
新城は皆にそう言って明るい顔をした。
「先輩、この結界にいなかった人はどうなるのですか?それと行方不明になった二人は……」
美樹が心配をしてそう尋ねると新城は
「大丈夫、僕が数えたらこの結界に居なかったのは一人だけで、しかも男子だ。
そして彼は転校してしまいかなり遠くに居る。問題は無いだろう。それにその不明な人物ならそこに居るじゃ無いか!」
そう云われて、皆は納得した。二人が化けていたのだと……
それが判り皆は安心した。

鈴和は新城に「何時向こうへ行くの?」
そう訊いたのだ。それは自分の兄とも思っている新城の事を思っての事だった
「そうだな学校は休みたくないので、金曜の放課後でもいいかな?」
新城はそう二人の男に問うと男達も「それで結構です」と了承した。
彼らも、これから向こうに色々と連絡する事が沢山あるのだと思う。
すると、新城はサツキに
「出来ればサツキちゃんに一緒に来て欲しいんだ」
そう頼みこんだ。康子はそれを訊いて
「ええ!先輩サツキちゃんが好みだったんですかぁ~」
ともう半泣きの状態だ。
「違うよ康子ちゃん。向こうに行ってどうやって帰って来るんだい?この中で異世界に行く事が出来る能力を持っているのは、サツキちゃんと鈴和ちゃんだけだ。しかも鈴和ちゃんは自分だけしか移動出来ない。だからサツキちゃんに一緒に行って貰うのさ」
新城がそう説明すると何とか康子も納得したのだった。
その様子を見ていた鈴和は、ある疑問というか確信を感じたのだった。

金曜日の放課後私服姿の新城とサツキ、それに二人の男が新城邸にいた。
鈴和も康子も美樹も傍にいて見守っている。
「どれくらい時間が掛かるの?」
鈴和が男たちに尋ねると片方の男が
「血液検査でDNAを調べるだけなら半日もいあれば充分ですが、王のご子息の確認となるとまる一日は掛かると想います。幼い頃採取してあった指紋とか色々と照合しますから」
そう丁寧に説明する。
「まあ日曜の晩にはとりあえず帰って来るよ」
新城はそう明るく言うのだった。
「じゃあ行きますか?サツキさんは私達のどちらかと手を繋いでおいてください。道案内しますから。そうすれば帰りはご自身で帰ってこられますからね」
男がそう言うのでサツキは片方の手を新城ともう片方を男と繋いだ。
それを確認すると、「じゃあ行きます」
男がそう言ったかと思うと4人の姿が静かに消えて行った。
「ああ、行っちゃった……」
康子が寂しげに言うのが鈴和には逆におかしかった。

新城が目を明けるとそこは明らかに自分のいた世界とは違うことが判った。
そして、封印されていた自分の過去の記憶が蘇って来た事も判った。
「そうか、そうだったのか……」
隣に居たサツキは新城の心をテレパシーで読んでその事実に驚愕をした。
振り返るとふたりをここまで誘導した男達がそこにかしこまっていた。
二人共新城が記憶を取り戻した事が判ったからだ。
「申し遅れましたが、私はアイと申します。記憶を取り戻された様ですね。ならば今更検査は要らないでしょう」
美樹によって手に傷を負わされた男がそう言う。そしてもう一人が
「私はサイと申しますどうかお見知りおきを」
それを聞いて新城は
「僕はこの世界では●※□#という名なんだね。初めて知ったというか思い出したというか……」
新城がそう言うとサイは
「王子、それは本名、通常はサイドネームを……そうしませんと敵に操られます」
「そうか、元々はそれが原因だったねじゃあ、ELS エルスでいいかな?」
「はい、それで結構でございます。さ、御案内致します」
新城(ここでは作者がこの人物を表す時はエルスではなくこの名で表現します)はそう言われると二人の後を従いて歩きだした。その後ろをサツキが従う。

少し歩くと歩道がありこれは動いていた。
周りの景色は緑が多いものの近代的な建物が程良い感覚で立っており、未来都市と言うものがあるならこのような都市だろうとサツキは思っていた。
気になるのは都会であるのに、すれ違う人が余り居ないという事だった。
「そんなにまで人口が減ってしまっているんだ」
サツキは周りの景色からそう思っていた。
近代的な建物が立ち並び、緑が多く、歩道は動いており自分で歩く必要さえ無い世界。
空は澄み渡り、調度良い気候、でもこの感じは何だかまるでエアコンで温度管理されている様な気にもさせられるのだった。
道には自動車等は一台も走っておらず、恐らく人々はテレポートで移動しているのだとサツキは理解した。
進み過ぎた世界……サツキは早くもこの世界をそう感じていた。

やがて、動く歩道の先に大きな建物が見えて来た
アイがそれを指さし
「あれが王宮でございます」
そう云われたので新城もそれを見ると、幼い頃ここで遊んでいた事が思い出されて来た。
そうあの日、王政転覆を狙う革命軍が行動を起こし、王族を尽く殺害して来た連中は遂に王宮に攻め込んで来た。
王は自分の事は兎も角、息子だけは生き延びさせようと、異世界にその身を移動させたのだ。
その時、異世界では過去の記憶が蘇らない様に封印させたのだ。
それは、余計な記憶と能力が発揮出来ない様にとの思いだったが、初めに能力者の幼い鈴和と出会ってしまった為に能力は封印されなかったのだ。

その後革命軍は尽く捕まり事件は解決したが、王は咄嗟にした為に異世界への移動先が判らなくなってしまっていた。
その後、色々と調べてみて(何しろ平行世界は無数にあるので調べるだけで時間が掛かる)
いたが未だ判らずと行った処だったのだ。
だから今回のことは王にとっても非常に喜ばしい事だったのだ。

段々と王宮が近づいて来るにつれ、新城は懐かしさで胸が一杯になるのだった。

「超能力高校生はパフェがお好き」 第29話

第29話 「新城の生まれ」

鈴和も本物の美樹も康子も、一瞬にして自分の自由が奪われたのが判った。
「これが新城先輩の『支配』なんだ……」
鈴和は心の中でそう思い、何とか横の康子だけでも見れないかと思ったが無駄だった。
新城は鈴和達が自由が利かないのを見てとると、右手の指を「パチン」と鳴らした。
その瞬間、鈴和も美樹も康子も自由が復活した。
「大丈夫だよ。皆は普段と同じ様に動ける様にしたから」
そう新城は言うと、男が作った結界の中に入って行った。

案の定結界の中ではサツキが固まっていた。
そして、中を良く観察するとサツキと同じ顔をした能力者が固まっていた。
新城はそこでも右手の指を「パチン」と鳴らすと、能力者の結界の指示は一瞬で崩れ、サツキだけが自由を得たのだ。
そして、もう一度指を鳴らすと能力者の結界が解けて、新城の結界だけとなった。
「そっちのヤツとこっちのヤツを身動き出来ない様に縛っておいてくれ」
新城はそう鈴和に頼むとサツキに
「大丈夫だったかい?」そう言ってサツキの事を心配したのだ。
「大丈夫です!」サツキは力強く言うと、新城が人気があるのは当たり前だと思った。
人の上に立って物事を見る素質があるのかも知れ無いとその時は思ったのだった。

そして新城は皆が無事なのを確認すると結界を解いたのだった。
能力者の男二人は気がつくと自分達が縛られているので面喰らってしまった。
特にサツキと相対していた男は自分が「なりすまし」の結界を仕掛けたのに何時の間にか自分が縛られていたのが信じられなかった。
「クソ、お前ら何やった!」
男は激しく言ったが新城は静かに
「二人共大人しくした方が良い。二人をこれから我々の組織に連行する。そこで色々と話して貰う。いや話さなくても調べれば判るがね」
そう言って二人を見た。
すると、片方の美樹に化けていた方が
「あんたの能力はもしかして「支配」かい?」
そう訊くので新城は「ああ、そうだが、それが何か……」
そう言い返すと男は表情が変わり
「あんた、もしかして、この世界の生まれじゃ無いだろう?」
いきなりそう訊いてきたのだ。
「どうしてそれを知っている……」
新城の表情がやや暗くなった。
「やはり……あんたは、俺らの世界で突然消えた王子の可能性があるのかも知れないな」
ニセ美樹になっていた方の男が新城にそう言って分け知り顔をする。
それを聞いた新城はおもむろに
「じゃあ、僕がお前らの国の王子だというのか!?」
そう言って笑い
「証拠があるなら見せて貰おうじゃ無いか、いい加減な事を言うなよ」
そう言って今度は怒った。
ニセ美樹だった方の男が新城に
「お前の使った「支配」は我が世界では王位を継ぐものだけしか与えられない能力だ。だから今現在その能力を使えるには我が世界でも王だけなのだ。王子は先程も言った通り十数年前行方不明になったままなのだ。生きていれば今年17歳になるはずだ」
それを聴いて新城は正直混乱し始めていた。
自分は何処か異世界からやって来たのは覚えているが、元の世界の記憶は全く無い。
だから自分では何処の生まれだか証明しようが無いのだ。

「我々と一緒に来てDNAを調べればすぐに判る」
男はそう言って続けた。
「向こうへ行き、違っていたらすぐ殺害か?」
新城が冗談めかしに言うと男は
「そんな事はしない。俺達だってこの仕事があるからな。ちゃんと送り返してから殺害する」
そう新城に説明をする。新城はそれを受けて
「大した変わりは無いな、いずれ殺す積りなんだな」
と言って「その前に死んでみるかい?」
と笑顔で語り書け、「支配」の結界を作ろうとした。その時だった。
「待って!新城先輩!」
それまで黙って見ていた康子がいきなり新城に語りかけた。
「もし、先輩が異世界の王子だったら……」
康子は真剣にもしもの時の事を心配している様である。
「康子ちゃん、万が一にもそんな事は無いと思うよ」
そう新城の言葉にも康子は納得していない様である。
新城は仕方なしに
「例え、それが事実であっても僕が向こうの世界に行く必要は無いんじゃ無いのかい?」
そう言って男たちの反応を伺った。
男たちは逆に「とんでも無い!王子と判明したら、すぐ国に帰って貰います。帝王学を学んで貰います」
そう言って康子を困らせた。
康子は新城が異世界の王子かどうかより、離れるのが嫌なのだとこの時鈴和は思った。
どれだけ新城の事が好きなのかと鈴和は呆れるのだった。

男たちは抵抗が出来ない様に気で半自由を奪う形にして、縄で結くのは辞めにした。
「ありがたい。どっちみち「支配」という究極の能力相手には抵抗なんか出来やしない。だから王位を継ぐ人の能力だと言われているんだ」
ニセ美樹だった男がそう言って、能力の説明をする。
新城は、自分がこちらの世界に来た時の事を、教えて貰っているので、疑問点を男達に問う。
「僕はこちらに来た時に異世界の言葉を話していたそうだが、お前達は何故同じ言葉を話しているんだ」
その問いに男たちは
「我々も独自の言葉を持っているが、普段はテレパシーで会話をしている。テレパシーが通じない相手には言葉で会話をするのだ。ちなみに、こんにちは、は『※△▼■□☆@?○◎』と言う」
全く判らなかった。正直言って言葉とも思えなかった。
「こちらに来る為に言葉を覚えたのだ」
手に傷のある男がそう言って周囲を納得させた。

「兎に角、売春だかデートクラブだかの組織は潰させて貰うし、再びこの地でこのような事は止めて貰う」
新城が厳しく言うと、男たちは仕方がないという感じで
「まあ、いいさ、卵子も精子もある程度は溜まって向こうに送ったからな」
割合あっさりと納得した。
「ほう、やけにいい子になるじゃ無いか」
新城がそう言うと男たちは
「もし、王子だったら、我々がその王子が暮らしていた地でそんな事をしていたのがバレたら只では済まない」
そう言って苦笑いをしている。
「それがきちんと守られたなら、僕は向こうへ行って検査しようじゃ無いか」
新城の突然の言葉に鈴和も康子も美樹もサツキも皆驚いたのだった。
「先輩!」もう康子なんか泣きそうである。
「大丈夫だよ康子ちゃん。君に逢う為に必ず帰って来るから」
そう言って新城は康子を慰めたのだった。

「超能力高校生はパフェがお好き」 第28話

第28話 「偽物と本物」

 鈴和は今感じた強い美樹の気に戸惑いを覚えていた。
「今の強い気は確かに美樹のだわ。でも目の前にいる美樹はだあれ?」
そんな事が顔に出て居たのかもしれない、サツキが少し離れた所で自分を呼ぶのが判った。
鈴和は、康子とそれから康子とじゃれあってる美樹に判らない様にそっと近づいて
「サツキもさっきの強い気を感じた?」
そう訊いてみるとサツキも
「鈴和も感じた!? やはりね……どういう事だと思う?」
小声で鈴和に問うと鈴和も
「もしかしたら、目の前の美樹はニセ美樹かも知れないわ?」
そう言って、それを訊いたサツキは
「証明は? 見て、感じる限りは本物なんだけど……」
そう言いながらため息をついた。

鈴和は「サツキ、私、トイレに行くふりして、さっきの強い気の後を追ってみるわ。連絡はテレパシーでするけど、バレると困るので、符丁で言うね」
「符丁?……ああ、暗号ね」
サツキは一瞬戸惑ったがすぐに理解した。
「こっちの美樹がニセモノだったら、クロ! 本物だったらシロ!って思って伝えるからね」
そう言うと
「康子、美樹、私、ちょっとトイレ行ってくるから」
そう言うと鈴和はその場を離れたのだった。

一方、本物の美樹は……
「あんた達みたいな女の子の気持ちを踏みにじる様な輩は天が許してもわたしが許さないからね」
そう言うと自分のスカートの中に手を入れてナイフを取り出すそうとしたが、そこに無いのに気がついた。
「ふふふ、何回も引っかかりはしないよ。ちゃんと君が寝ている間に君の太腿から外しておいたからね」
男はそう言うと美樹のジャックナイフを取り出してみせた。
「返しなさいよ。それあたしのなんだから」
そう言ってはみたものの、返すはずが無いとは美樹も思っていた。

ナイフを手にした男は美樹に少しずつ近寄って来る。
美樹は後ずさりしながらも、男の行動の隙を見ていた。
その時だった。
『ここだわ』という声がドアの向こうから聞こえる。
男が視線をドアにやった途端に美樹は男の両足にタックルを試みた。
「あっ!こいつ!」
そう言って男が倒れた時、ドアが蹴破られ、鈴和が飛び込んで来た。
「鈴和!どうしてここが」
美樹が興奮してそう叫ぶが、美樹は倒した男に馬乗りになっていたのだ。
「あら美樹、お楽しみだったの?」
そう言う鈴和に美樹は
「そんな訳無いでしょう!わたしだって選ぶ権利はあるわ」
「クソ!仲間か、あいつ何やってんだか……」
男がそう吐き捨てる様に言うと鈴和はサツキにテレパシーで「クロ」とだけ伝えた。
そして気で男の両手を縛り、更に美樹の持っていた細いが本物のチェーンで手首も結いたのだ。
「あんた、ナイフだけじゃ無いんだ。そんな物まで持って歩いてるの?」
鈴和が呆れるとも感心するとも無しに言うと美樹は
「そりゃそうよ。ナイフの為にスカートだって鈴和達みたく、たくし上げて無いんだから」
そう言って自分の制服のスカートの裾を持ち上げた。
「一見超真面目に見えるものね。違うけど」
「最後は余計!」
「はいはい、じゃこいつ皆の所に連れて行こう」
「うん、そうしよう」
そう言って二人はその部屋をでたが、そこは校務員さんの控室だった。
それを見て鈴和は「校務員さんも仲間なのかな?」
そう思ったが、今はサツキと康子の元に行かないとならないと思った。

サツキはいつこっちが正体に気がついて居る事がばれないか気が気で無かった。
神城は楽しげにニセ美樹と康子と会話をいている。
どうも良く見ると神城は康子が気になっているみたいだった。
「そうか、神城さんは気がついているんだ。それで、やたらニセ美樹に親しくしてる康子が気になるんだ」
サツキはそう理解をして、自分は少し離れた場所に居た。
やがてサツキに鈴和からテレパシーで、すぐ後ろに捕虜を捕まええている。と連絡が入った。
それを信じ後ろを振り返ると本物の美樹と鈴和それに結かれた男が立っていた。

その時だった神城が、ニセ美樹と戯れている康子を、強引にさらって、引き離しに掛かった。
「な、なにを?」そう言いかけて、ニセ美樹は視線の隅に、鈴和達を認めたのだった。
「馬鹿ねえ、ドジって」
そうニセ美樹は言うと元の姿に戻り、目の前のサツキ目掛けて気で出来たナイフの様なものを投げつけて来た。
シュッ!と音がしてサツキの脇をナイフが抜けて行く。
サツキはそれを横っ飛びに避けながら、自分も気を放出して対抗する。
神城は康子を抱いて、離れて行く。
サツキは康子が安全圏に去ったのを確認すると
「さあ、ニセ美樹、あたしが相手だからね。覚悟するんだよ」
そう言ってサツキは薄笑いを浮かべる。男は
「ふん、こうなったらこちらも本気を出そうかな」
そう言うと何やら手を振り下ろすとそこから放出された気が周りを包んでしまった。
「何これは、鈴和も神城さんも見えないじゃない」
サツキはそう叫ぶと男は
「ふん、この結界の中は俺の能力『なりすまし』の世界だ。君はこの結界の中では俺を認識出来なくなるのさ」
そう言って男はその姿を消したのだった。
サツキは自分の気を張り巡らせて結界の中をサーチしていたが、ようとしてニセ美樹になった男の存在は判らなかった。

鈴和はサツキが危ないと見て自分も結界に入って行こうとしたが、その時神城が
「鈴和ちゃん、康子ちゃんと美樹ちゃんを頼む。それからその男もちゃんと見張っていてくれ。今からこの辺僕の「支配」の結界に入れるから」
そう言って、それまで抱きしめていた康子を鈴和に渡した。
「この結界ごと「支配」に入れてしまうの?」
そう鈴和が訊くと神城は
「ああ、その方がてっとり早い」
そう言ったかと思うと何やら軽く表情を歪めたのだった。
次の瞬間、世界が変わった……

「超能力高校生はパフェがお好き」 第27話

第27話  「目的」

 明るいLEDの照明が部屋を照らしていた。
美樹は自分が何処に居るのか全く見当がつかなかった。

「目が覚めた様だな、お嬢さんいや、井上美樹さんと呼ぼうか」
目の前に現れた男は左手の甲に傷があった。
美樹は自分の体に危険が迫っている事を感じ取った。
それを察したのか男は
「心配しなくて良い、君には暫くここに居て貰う。危害は加えない。最もこの前の様な事をしなければだがね」
男はそう言って不敵な笑みを浮かべた。

美樹は改めて自分の体が乱暴されていないか確認すると
「あんた達は何者なの? 何の目的があって西高に巣食ってるのよ?」
そう男に問い詰めた。
男は美樹の言葉を聴いて薄ら笑いを浮かべていたが、やがて
「そうだな、自己紹介ぐらいはしておいた方が良いな。俺達は異次元の世界からやって来た者達だ。まあ詳しい事は言わんがな」
そう言って部屋の隅にある冷蔵庫を開けて、ペットボトルのお茶を2本出すと片方を美樹に手渡した。
「変なモノは入ってはいない」
そう言って自分の分を開けて喉を鳴らして飲み込んだ。
それを見て美樹も蓋を開けて一口くちを付けた。
冷たいお茶が喉を流れ込むと体が生き返る様な感じがした。
「やっぱり異世界人なんだ。いったい何の目的があってこの世に来たのよ」
美樹はそう言うと男は薄笑いを受かべて
「そう、理由は君のような可愛い娘とセックスがしたかったから。という理由じゃ駄目かな」
「ふざけ無いでちょうだい!」
美樹が怒りに任せて言うと男は
「おや、半分は本当だったんだけどね。最もそれだけじゃ無いがね……」
そう言って意味ありげな笑いをした。
「じゃあサツキが言っていた売春クラブをやってる訳なんだ」
美樹がそう言うと男は
「本当に気が強いんだな。恐れというものを知らない様だね。こっちはこの前ナイフでやられて本当は頭に来ているんだ。このままなら俺も本当に切れるかも知れない。君の卵子も戴いて行こうかな」
そう言ったのだ。美樹は良く意味が判らなかったが「卵子」と訊いて身の危険を初めて感じたのだった。

男はお茶を飲み干すと
「俺達の世界では人口が急速に減りつつある。暫くはその原因が判らなかったが、最近やっと判明した。何だと思う?この国も減りつつあるそうだがな」
そう美樹に問いかけて来た
「判らないわよ。そんな事。あんたらの世界なんか全く知らないんだし」
美樹が言い返すと男は薄笑いを浮かべ
「そうだったな。じゃあ簡単に紹介すると、科学力はこの世界より進んでる。そうおよそ50年から100年ぐらい先かな。だが、一番違うのは、殆んどの人間が特殊能力を持っている事だ」
そう言って美樹を見た。美樹は男をにらみ返し
「特殊能力って、この世界だって持っている人は居るわ」
そう言い返すと男は
「いいや、そんなのでは無い。テレパシーやテレポートは俺らの世界では特殊能力にはならない」
そう言う。
「じゃあ、どのような能力なのよ?」
美樹の問いに男は
「そう、俺の片割れとか俺も持っている『なりすまし』とかそのたぐいだ」
そう言って自分の姿形を美樹そっくりにしてみせた。
余りの事に声も出ない美樹
男は手を美樹にかざすとややあって
「貴方の事は皆判りました」
そう美樹の声で美樹の言い方で言ったのだ。
「ちょっとあんた……」
美樹が何か言おうとすると
「美樹ちゃん、私も今は美樹なのよ。記憶も感覚も思考も容姿も全く貴方と同じなのよ」
そうもう一人の美樹にそっくりな男が言う
「それでも、そっちはニセモノでしょう!」
本当の美樹がそう言い放つともう一人の美樹は
「ここに100円玉が2つあるわ、どちらが本物かしら?」
そう言う。本当の美樹は
「どちらって言っても…‥…‥両方本物じゃない!」
そう言い返すと美樹に化けた男は
「そう、両方共本物よ。それと同じなの、指紋、網膜の血管パターンも全て同じ。私達は今、全く同じなのよ理解出来たかしら」
そう言い放ったのだ。
美樹は理解した。もとより頭のいい子だったから回転は早かった。
それは、たとえこの場で自分が殺されても、目の前にいる人物が自分にすり替わっても、誰も何の疑問も持たないという事を……
「どうやら理解出来たようね。じゃ次のお話ね」
そう言って美樹に化けた男は本題に入って行った。

「そう、余りの特殊能力が過ぎたのか、出生率が段々落ちて来てしまった。そこで原因を調べたら、男女も生殖能力が落ちている事が判ったのよ。男は精子の減少、女は卵子の分裂異常、つまり受精しても細胞分裂が始まらないという事なのよ」
美樹になった男はそこで前の姿に戻ると
「だから、この世界で元気な精子と卵子の捕獲を始めたのさ。勿論そのままでは使用しない。DNAを解析して、部分使用させて貰う。つまり良い所だけ使わせて貰う」
そう言って美樹の体を舐め回す様に見つめる。
「冗談じゃ無いわよ。あんたら滅ぶのは勝手でしょう。なんで私達にちょっかいを出して来るのよ」
美樹がそう言うと男は
「色々な世界を見てきたが、この世界がDNAが一番近いからだ。理由はそれだけ。それに手荒な事はしない。西高の男子は我々のセックスアンドロイド相手に 素晴らしい快楽を味わうだけで良いのさ。いくらでも楽しめば良い。大事な精子は全てアンドロイドが大切に瞬間冷凍して我々の世界に転送する」
そう言って薄笑いを浮かべる。
「じゃあ女子はどうしてるのよ?」
美樹が決死の思いで訊くと
「我々の能力者に『移転』という能力を持ったものがいてね。私じゃ無いが『なりすまし』の能力者が女生徒と交わるのさ。勿論その相手はその娘の彼氏か恋し てる相手だがね。そして次の間にいる『移転』の能力を持った者が女子の卵巣から卵子を戴くのだ。なに、痛くも痒くも無い。第一君たちの卵子もその殆んどが 排卵される事無くその役目を終わってしまうから、これは有効活用だろう? 男子は好みの女の娘とセックス出来るし、女生徒は好きな相手とセックス出来るし、悪い事は無いという寸法さ」
そう男が言うのを訊いて美樹は
「冗談じゃ無いわ、その娘はその時はそれで良いかも知れないけれど、本当は違う相手だったと判ったらどんなに傷つくと思っているのよ。許せ無い……女の子の気持ちを弄ぶなんて本当に許せない!」

美樹は怒りに我を忘れて仕舞った。
この怒りの気に鈴和が感づいたのだ。
「あれ、この気は美樹のだわ。そんなに離れていない距離だわ……でもおかしい?美樹は目の前に居るのに……」
鈴和は先ほど感じた違和感をもう一度感じるのだった。

「超能力高校生はパフェがお好き」 第26話

第26話 「混乱」

 鈴和と康子の後を付けていたのは二人組だった。
「ちゃんと、覚えたか?」
「ああ、大丈夫だ。さつきのファミレスでウエイトレスに化けて、5人全員のDNAを採取したからな」
「なら安心だ。アイツラに目にもの見せてやる」
片方の男がそう言っていきり立つともう一人が
「まあ、まあお前の仇は取ってやるよ。それと変な事を感じたんだが……」
そう言って首を傾げると片方は
「なんだ?言ってみろよ」
そう言われたので
「じゃあ言うがな、あの中に男が居たろ? 確か神城と呼ばれていた奴」
「ああ、それが?」
「あの男、なんか俺らに近い存在だぞ」
それを訊いて片方の男は
「いや、それで言うと、あの男、王子が成長した感じに似てる様な気がしていたんだ」
「なんだお前もか!」
「うん、気のせいとも思うがな。王子がちゃんと成長したらあんな感じになったと思っただけだ。お前のその近いとは?」
そう訊かれた5人のDNAを採取した男は
「DNAがさ、俺らと極めて近い感じがするんだ。それとあの中でサツキと呼ばれていた娘は異世界人だな。それは分かった」
「まあ、今日はDNAを採取出来ただけでも良しとしよう。明日から思い知らせやる」
そうつぶやく様に言うと暗闇に消えて行ったのだ。

翌日、5人は西高の制服に身を包んで放課後の西高へとやってきた。
「ねえ、これから部室に行って、昨日の本物の方だったらどうする?」
康子は昨日声を掛けて来たのが本物だと思っているのだ。
それを聞いて美樹は
「じゃあ、私が傷付けたのは何処へ行ったんだろう?」
美樹は手の甲に傷を付けたのが、かなり重要な証拠になるのでは無いかと思っているのだ。
廊下を歩いていて不意に美樹は
「あ、先に行ってて、私トイレ寄って行くから」
そう言って皆を先に行かせた。
この時美樹は、あの時、対決した男に近い人の気をなんとなく感じていたのだ。
トイレに入り、物陰に隠れてあの男が近づいて来るのを待った。
すぐ、傍まで来たと思った瞬間に飛び出して
「あんた、また私を狙っているんだね」
そう言ってジャックナイフを取り出して構えた。
相手の男はもう顧問の顔をしていないが、手の甲に美樹が傷付けた跡がハッキリと残っていた。
美樹はそれを見て自分の勘が間違っていない事を確信したのだった。
「さあ、今度は逃げられないわよ」
そう言って、男と距離をじわじわと詰めて行く時だった。
不意に後ろからハンカチを嗅がされ、うっかりとそれを吸った美樹は意識が遠のくのを感じた。
そして、後ろから襲った男の両腕に落ちたのだった。

「後ろには気が回らなかったか。まあ、俺達のアジトで寝ていて貰おう」
そう言うと手の甲に傷のある男が美樹の体を受け取った。
そして、美樹を眠らせた男は
「俺はこいつに『なりすます』」
そう言うと見る見るうちにその男は美樹そっくりになった。
「ご丁寧に両方の高校の制服まで用意してるからな」
美樹を抱えた男が笑いながら言う。
「大丈夫よ。記憶も移したし、思考回路も組み込んだから、大丈夫」
美樹の声、美樹の言い方になった男は
「じゃ、アイツラに合流するわね。連絡は何時もの方法で」
そう言うと鈴和達を追って行った。
残されたもう一人は本物の美樹の体を抱いて
「さあ、かわいこちゃん、俺達のアジトで暫くオネンネして貰おうかな」
そう言うと美樹を抱いたまま何処へと消えたのだった。

「ねえ、美樹遅く無い?」
鈴和は何時もより長いトイレタイムに何となく不安を覚えたのだ。
その時だった
「悪い!御免!」
そう言って美樹が走って来た。
鈴和はその時得も言われぬ違和感を感じたのだが、美樹は美樹だし、化けてるのかと思い気も調べたら同じだったので、自分の思い過ごしかと思い直した。
念の為に自分の守護霊に訊いても問題無いとの事だった。
大丈夫か……鈴和はそれでも不安が消えないのだった。
神城から昨日訊いた「なりすまし」は人間だけで無く、霊魂も錯覚させる事が出来ると訊いたからだ。

「大丈夫だよ。ちゃんと待ってあげてるから」
康子がそう言って美樹に抱きついた。
「こら、康子!苦しいよ」
美樹が笑いながら康子に言う。
「良かった!やっぱり本物の美樹だった」
そう康子が言うので美樹も
「なにそれ?私はわたしだよ!」そう言って笑う。
それを見てサツキは美樹が戻って来た時の得体の知れない違和感は錯覚で、自分の思った事が杞憂だと感じるのだった。

「それより、今日は顧問来てるの?」
美樹が鈴和に尋ねると鈴和は
「今は部室で何か製作中ね。発表する事だと思うけど」
そう美樹に説明する。
サツキが「美樹、教室の中覗いて手の甲を調べたら、本物か判るよ」
そう言ったので、窓の隙間から美樹はそっと部室の中を覗いてみた。
「う~ん、傷は無いわ。本物なのかも知れない」
そう言って美樹は窓から目を離した。
だが美樹になりすました能力者は神城に注意を向けていた。
美樹の記憶から分かった事は3歳の頃にこの世界にやって来たという事。
ならば、やはり「王子」では無いのか?
能力者は、当分美樹になりすまし、近くで神城を観察するのも悪く無いと思い始めていた。
「あの娘には悪いが、当分なりすまさせて貰おう」
そう決意していた。
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