☆お題:商業的な列車 必須要素:うんち 制限時間:2時間 使用30分

 意外と知られていない話だが、東京の山手線のあるターミナルから出ている大手私鉄は、その昔「農業鉄道」だった。所謂「あれ」を運搬していたのだと言う。「あれ」とは”あれ”である。
 そう人のお尻から出る黄金色の”あれ”である。
 まあ農業の肥しを運んでいたのだそうだ。そのついでに人も乗せていたという。極めて商業的な列車だと言えよう。
 だが、今や沿線はおしゃれな町並みに変わり、住んで居る住民も高額所得者ばかりだ。逆の東京の東側みたいな暗いイメージはない。
 それはそうだ、その鉄道の先々代の社長は農業鉄道だったイメージを払拭するために、東京と横浜を結んでその地域に鉄道網を敷いている会社を徹底的に参考にしたのだ。
 日本でも屈指の高級住宅地を走っているその鉄道会社を参考にしてイメージUPしたのだ。それは成功して、同じターミナルから出ている別な大手私鉄の線より差別化することに成功した。

 だが、鉄道本来の設備には余り金額を掛けなかったようだ。高架化も遅れているし、複々線化も全くだ。線路は伸ばしてみたが単線で済ましている。駅舎も古いまま。ホームも狭く増え続ける住民を運ぶには設備が心もとなくなって来ているのだ。
「社長、我が社は代々怠って来た設備投資のツケがここに来て大問題になっています、早急に駅舎の改良やホームの拡大化が求められます」
 役員会で議題に上がるのはそればかりだった。慢性化した混雑はもはや電車の増発では賄えなくなって来ていた。
「社長! 良い案があります」
 ある役員が手を上げた
「言って見給え」
 社長が指名した。役員は立ち上がって話し始めた
「行く行くはホームや駅舎の拡充が求められますが、現在の人員の輸送向上に関しては、混雑時は座席を無くしてしまえば良いのです。そうすればコストが殆んどかからずに30%の輸送人員の増強が図られます。素晴らしいと思いますが?」
「だが、座れないので苦情が出ると思うが?」
「それには定期券の割引や回数券に特典を付けるなどして通勤客の利便を測ります」
「そんなので上手く行くかね?」
「勿論、空いてる時間帯は元の席に戻します」
「そうか、でも私は心配だよ」
「社長、良く考えて見て下さい。我が社は運んでいるものが、“そのもの”からそれを作る者を運ぶのに変わっただけですから」

 了

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必須要素に参りましたw 出来が……