☆お題:どうあがいても足 必須要素:アクション 制限時間:2時間 使用55分

 夏休みなので家でゴロゴロしていた。宿題はやってしまったし、小遣いは無いし、結局家でそうめん食べてゴロゴロしてるだけの毎日だった。
 その日も昼のそうめんを食べ終わるとゴロリと畳の上に横になった。たちまち瞼が重くなって来た。今日は縁側から涼しい風が入って来ている。クーラーの無い我が家では貴重な風だった。そして俺はいつの間にか意識を失った。
 どのくらい昼寝をしたろうか? 誰かが呼ぶ声がした。むっくりと起き上がり周りを見るが誰もいない。縁側からは相変わらず心地よい風が吹いている。
「もう一眠りするか」
 そう呟いて寝っ転がろうとした時だった。
「そんなに寝てばかりいると太るぞ! 少しは運動をするとか考えないのか?」
 何だか親父みたいなことを言うと感じた。周りを見てもやはり誰もいない。
「ここだよ。ここだ。下を見ろ」
 声のする方を見ると何と喋っているのは俺の左足だった。俺の左足に小さな口が出来てそこから声がしていたのだ。
「駄目だ、まだ寝ているのかも知れないな。寝すぎて変な夢を見ているらしい」
 そう独り言を言うと左足のやつが
「寝ぼけんなよ。ちゃんと俺を見ろ!」
 俺の左足はやや怒りながら叫んだ。やっぱり左足が口を利いている。
「お前があまりにも足を使わないから、俺は今日限りお前の体から独立することにした。今後は好き勝手にやらせて貰うからな」
 ここに来て俺はこれが夢でも幻覚でも無いことに気がついた。
「お前、俺の左足だろう? 独立ってどうするんだ?」
 俺は基本的なことを尋ねてみると
「簡単だよ左の股関節から外して勝手に出て行く
「そんな簡単に行く訳がないだろう! 独立ってのはクリミア半島だってどこだって大変なんだ。口で簡単に言うほどじゃないんだぞ」
 そういえば口はあるが目や耳はどうしたのだろう? そんな疑問に思ってると左足は
「お前が食っちゃ寝ばかりしてて、足を使わないから自分で運動することにしたんだ。俺達には運動する権利がある。それを行使させて貰うだけだ。ちなみに俺 が独立すれば相棒の右足だってアクションを起こすだろう。両足が独立したって判った暁には両腕だって黙っちゃいないだろうな。お前、両手両足が無くなった らどうする?」
 俺は左足の言うことを聴いていて、段々と空恐ろしくなって来た。
「どうすれば独立を思い留まってくれるんだい?」
 俺は必死だった。この若さで両手両足が無い体にはなりたくない。後100年もすればデパートで体の部分が買えるようになってるかも知れないが、今はそんなものは買えやしない。俺はどんな条件でも呑むつもりだった。
「よし、こちらの条件を呑んでくれるなら思い留まっても良い」
「その条件とは?」
 俺は必死で先を問うた。
「まず、食っちゃ寝ばかりしてないで、ちゃんと運動しろ! それから、そうめんみたいな炭水化物ばかり食べていないで、鶏肉や大豆なんかのプロテインを食 べて筋肉を強化しろ! お前が何もしないおかげで、俺は細くなってしまった。以前はカモシカのように力強かったのに……どうだ、ちゃんと守れるか?」
 俺は必死だったのだ。この際何でも言うことを利くことにした。

 翌日からいいや、その日から俺は運動を始めた。昼もそうめんばかりでなく、鶏のささみを蒸して食べるようにした。朝はゆでたまごを幾つも食べた。そして 運動のおかげで体重も減り、バランスの良い体型となった。すると現金なものでカワイイ娘に告白されて交際するようになった。
そんな時に例の左足が再び口を利いた。
「なあ、あの時はああ言ったけど、俺達はどうあがいても足なんだよ。頭のお前が行動してくれなかったら大変なことになっていたんだぜ」
「大変なことって何だい?」
「それはな、体重増加で糖尿病や痛風や動脈硬化なんかになって彼女も出来ないうちに死んじゃうってことさ」
 そんなことにならなくて良かったと俺は思うのだった。

「ねえ、先生。今度のプログラムはちゃんと成功するでしょうか?」
 助手の子が俺に尋ねる。俺はあれから勉強して、肥満解消の研究を大学で行う研究者になったのだ。今ベッドに寝ている患者は肥満の重症者だ。俺が経験した あの左足の反乱を疑似体験させているのだ。大丈夫、きっと成功する。何故なら、自分の体の部分が独立して無くなってしまうなんて恐怖は物凄いからだ。
 あの恐怖に比べれば食事を制限したり運動したりするのは訳無いからだ。


  了