☆お題:安いダンジョン 必須要素:レモン 制限時間:2時間 使用54分

 俺はある組織に忍び込んで捕まってしまい、地下牢に閉じ込められてしまった。捉えた組織の言うことには
「お前もスパイの端くれならば、この地下牢から脱出してみろ、上手く脱出して逃げおおせたなら、見逃してやろう。その代わり、逃げ出せなければ永久にこのままだ。飢え死にするまであがくが良い」
 少し小太りで古臭いサングラスを掛けた男がそう言って、俺に一個のレモンを投げてよこした。
「何だこれは? これで喉の渇きを癒やせというのか?」
「どう取ろうと、それはお前の勝手だ。好きに使うがいい。ひとつだけ教えておいてやる。そのレモンは幾らでも使い道があると言うことだ」
 小太りの男はそれだけを言うと扉を締めてどこかに消えてしまった。俺は残されたレモンを見つめるだけだった。これでどうしろと……

 兎に角、飢え死にする前にここから出なければならない。俺は必死で考える……駄目だ、焦っていい考えが浮かばない。
 半分諦めかけていた時だった。ふと牢屋の隅をナメクジが這っていた。俺はこの手に持っていたレモンをせめて何かに使いたくなり、手で半分にちぎるとナメクジにそのレモン汁をかけて、殺してやろうかと思って、手を伸ばすと、そのナメクジが驚いて俺に向って
「どうぞ、そのレモンの汁だけは勘弁して下さい。見逃してくれれば、あなたをここから出してあげますから」
 なんと口をきいたのだ。これは面白い
「そうか塩や砂糖に弱いとは知っていたがやはり酸にも弱かったのか」
「そうなんです。内緒ですが、我々は本当は酸が一番弱いんです」
「よし、本当にここから出してくれるなら、このレモン汁はかけないでおく」
「ありがとうございます! では早速」
 ナメクジはそう言ったかと思うと仲間を大勢呼び寄せた。すると壁の隙間から数えきれないナメクジが出て来たのだ。そして、そのナメクジ達は牢屋の鍵の所に集まるとその体のぬめりを沢山出し始めたのだった。
 何が起こるのかと思っていると、そのぬめりで鍵がバカになり開いてしまったのだ。
「さあ、どうぞ……これでダンジョンを抜けて逃げて下さい」
 ほうナメクジの分際できちんと約束を守るとは大したものだと思った.
「じゃあ逃げさせて貰うぜ」
 そう言ってダンジョンの方に行こうとするとナメクジが
「ああ、ダンジョンの途中には蛇がいます。何もせずに行くとそいついに飲み込まれてしまいます。そんな時はこれを使って下さい」
 そう言って手渡されたのはドロリとした半透明の液体が入った入れ物だった。
「何だこれ?」
「それは我々のぬめりが集まったものです。その蛇にこれをかけてやると蛇が溶けてなくなります。そう言って脅かして通り抜けて下さい」
「そうか、ありがとう!」
 俺はその入れ物を持つとダンジョンに入って行った。そして苦労しながら進んだ時だった。いきなり俺の目の前に大きな蛇が現れた。そして大きな口で俺を飲み込もうとする。この時俺はナメクジが言った事を思い出した。そして手に持っていたあのヌメリを蛇に見せた。すると蛇は
「これはナメクジのヌルヌルですな。これはダメです。これに私は弱いんです。見逃してくれれば出口に居る大蟇をやっつけてあげます」
 そうか出口には大蟇がいるのか。ならばこれも利用しない手はない。
「よし、判った。そこまで案内しろ」
 俺はダンジョンの案内を蛇にさせながら先を急いだ。すると蛇が言った通りに、出口に大きな蟇が構えていた。口から赤い舌を出している。
 だが、俺の隣の蛇を見て、動くけなくなる蟇。俺はその脇を悠々と歩いて通り過ぎ出口に到達したのだった。やった! 遂に脱出成功だ。これで俺はここから帰れる。そう思った時だった。後ろで不気味な音がした。振り向くと蛇が蟇を飲み込んだ音だった。
「邪魔者は消しましたから。もう大丈夫です」
 蛇が舌を出しながら言う。いい蛇だなと思っていたら
「あっ! しまった!」
 そう言って半分泣き顔になっている。
「どうしたんだ?」
「はい、俺、実は毒蛇なんです。でもいまさっき、自分で舌噛んじゃって……流石に不味いですよね……ああ、どうしよう……」
 俺は困る蛇を後にして帰りを急ぐのだった。

 
   了