一昨日から三次創作を載せて参りましたが、やはりレベル的に疑問符がつくような作なので、今日と明日で特に評判の良かった作品を再編集して載せます。
 次の事はまだ考えていませんが、明後日までには何か作品を用意します。
 程度の低い作品ですが、それでも一読して戴けるなら……
「11月の風}

 十一月になると神山も朝晩は大分冷え込む様になります。娘のめぐみは、文化祭の後から様子が変わってきました。何というか女の子らしくなって来たとも言うのでしょうか、仕草に恥じらいが出て来ました。やはり、これが恋の効果でしょうか?
 自分の時はどうだったか? なんて思い出せないものですね。でも、仕草を変える様な事は無かったと思うのですが……
 そう、積極的になりましたね。それは意識していましたので覚えています。兎に角、奉太郎さんは恋愛なんてまるで……という感じでしたから、私はわたしなりに頑張ったつもりでした。
 あの子はどうでしょうねえ。でも相手の守屋君は結構めぐみの事も大事に考えてくれている様です。
 明日が土曜日でお休みと言う日に学校から早く帰って来ると、私の所へ来て
「お母様、実は頼みがあるのですが……」
 と珍しく、恥かしげに言うのです。
「なあに、言ってごらんなさい」
 私がそう言うと、めぐみは消え入りそうな声で
「あのう…私に、三つ編みをして欲しいのですが……」
「三つ編み? あら珍しいわね。また、どうして?」
「……」
「ははぁん、守屋くんに見せたいのでしょう?」
 すると、黙って小さく頷きます。愛しい彼に自分の新しい姿を見せたいのですね。やはり私の子ですね。
「いいですよ、お風呂に入って髪が乾いたら、結ってあげましょうね」
「はい、ありがとうお母様!」
「守屋くんが見たいって言ったの?」
「見たいと言うか、『千反田さんは髪が長いけど三つ編みなんかするの?』と訊かれたので、見せてあげたいなぁと……」
「そう、じゃあ綺麗にしなくちゃね」
「はい!」

 夕食後、私は自分達の部屋にめぐみを呼んで髪を結っています。
「お母様は三つ編みしなかったのですか?」
「そうねえ、かほさんとじゃれて結って貰った事はあるけど、お父さんに見せた事は無かったかな」
 それを聞くとめぐみは、意味ありげな笑みを浮かべて
「あのね、お母様わたし面白い事を思いついたのだけど、いいかしら?」
「面白い事? なあにそれは」
「それはですね……」
 めぐみは、口を私の耳元に持ってくると、面白い提案をしました。私もめぐみの考えを聞いて面白いと思ったので、早速支度に取りかかりました。



 もう11月になると農作業は大した事は無く、今は「物流」の仕事が忙しい。今日も隣の県まで商談に行っていたので遅くなってしまった。帰って来て風呂にゆっくりと浸かっていると本当に疲れが抜けて行く様だ。
 でも、こうやって俺が曲がりなりにも千反田の家をやっていけているのも、えるのお陰だとつくづく思う次第だ。
もっと感謝しないといけないな……
 そんなことを思っていたら、高校の頃のあいつの姿を思い出してしまった。俺は、あの大きな瞳にやられてしまったのだと、思いだしていた。
 風呂から上がり、リビングの方へ行こうとして、廊下の突き当たりの所の電気が切れているのに気がついた。
「なんだ、暗いな、換えないと駄目だな」
 等と思って、廊下の先を見ると、誰かが立っている。
「誰だ?」と聞くとその人影は
「お久しぶりです。奉太郎さん」
 その声は……えるか?
 まさか、えるはさっきも俺が風呂に入るまで一緒に居たはずだしな……
「高校時代からやって参りました。お忘れですか?」
 いいや、おかしいだろう、高校のえると今のえるが別人だなんて。でもその姿を見るとやや薄暗いが確かにえるそのものだ。
 違うのは髪を三つ編みにしている事だが、顔や声や仕草もあの頃のえるだ。俺は混乱していた。だが目の前にいるのは正しく千反田えるなのだ、
 いったいどうしたと言うのだろう?
「える、えるなのか? あの頃のえるなのか」
「奉太郎さん……わたしです」
 ああ、えるだ!間違い無い……でもどうしてここへ……
 俺はもっと良く見ようと近かづいて、抱き締めようとしたその時
「お父様、わたしです。うふふふ」
 えるが、お父様? 親父さんと間違えて……めぐみか!!

 それは、俺達が高校生の頃の制服を着て、ただでさえ良く似ているのに、更に似せる為に化粧までした娘のめぐみだった。
「お前、父親をだましたのか?」
「あなた、私も一緒ですよ」
 そう言ってふすまの間から現れたのは、妻のえる本人だ。
「めぐみに三つ編みをしていたら、あなたが私の三つ編みを見たことが無いという話になりましてね。それなら見せてあげようとしたのですよ」
「だからって、昔の制服を出して娘に着せて、声まで出すなんて……やられたよ……」
「お父様、ごめんなさい。でもどうしても見て欲しかったのです」
「でも、お母様に完全になりきるには、目をもっと大きくしないと似ないので苦労しました」
「ああ、まあ、いや、驚いたよ。それにしても良く似ていたな」
 きっと、風呂で昔の事なんか思いだしていたからだろう。俺はそう思う事にした。
 それにしても、めぐみが化けた”高校生える”は本当に良く出来ていた。俺が騙されたのだから、どこでも通じるな。今度、里志にも見せてやりたいと思ってしまった。きっと夫婦で騙されるだろうな。
「なあ、今度里志夫婦を呼んだ時にもう一回やってくれないか?」
「ええ!もう一度やるんですか? かまわないですけど」
「あいつらも騙してやりたくなった」
「あいつらって、どなたですか?」
「里志夫婦だよ」
 俺の提案にめぐみは
「お父様、やりましょう!」
 妻のえるも喜び
「あなた! いいですねえ。麻耶花さんも驚きます」
これで今年のクリスマスあたりは面白くなりそうだ……

 了