「超能力高校生はパフェがお好き」 第16話

第16話 「危機一髪」

今、まさにサツキの刃が鈴和の喉元を裂こうとした瞬間、その刀は粉々に砕け散ってしまった。
あっけに取られているサツキをよそに、鈴和は内心助かったと思った。
そこに懐かしい気を感じたからだ。
サツキが次の攻撃を仕掛けようとしたその時、体が動かなくなってしまった。
目蓋さえ動かす事は出来ないのだ。サツキはその時、圧倒的な力の差を感じ、そして恐怖さえ覚えるのだった。
そして、その時「何とか間に合ったな。良かった」
そう言って上郷達也が姿を表したのだ。
「お父さん!どうしてここへ?」
「神城くんから連絡を受けて、やって来たんだ。あまり無茶をするなよ。母さんも心配してるから、一度ぐらい連絡を入れろ」
そう言って「こいつは本部に連れて行って、洗いざらい喋って貰う。ヒロポン事件の事も含めてな」
達也がそう言うと脇から神城と鈴和が姿を表した
「鈴和ちゃん。無理はイケナイよ。今回は僕達も判ったから良いけど、一人で戦おうなんて無茶過ぎるよ、それに万全の体調じゃ無かったのだから」
神城がそう言うと英梨も
「そうですよ、あんなに黒い気があるのに鈴和さん気が付か無い感じだったら、私達お芝居したんですよ」
そう言って笑っている。
鈴和は、そうか、自分はそれほどまで能力が落ちていたのか、と思い直し
「ありがとうね。お父さん、神城先輩、そして英梨。感謝します」
鈴和にしては珍しく素直に頭をさげた。
「じゃあ、こいつは連れて行くから」
そう達也が言うとサツキを連れて姿が見えなくなって行った。

「さあホテル帰りましょう! 新世界は今日は行けなくなってしまったけど」
英梨の提案に神城も鈴和も賛成した。
「でも帰りにホテルの傍の喫茶店でパフェ食べて帰りましょうよ」
そう言って鈴和が甘える様に言うと二人とも
「当然鈴和ちゃんの奢りだよね」と言って笑う
「うん、仕方無いね」
鈴和も舌を出しながら言って笑ってる。
「じゃあ、わたしは、チョコパフェがいいな!」
英梨がそう言って注文を付けると鈴和は
「はいはい、何でも頼んでね!」
三人は喫茶店に入って行った。

夕方のニュースは6時台の「話題の地域」と言うコーナーで紹介、放映された。
神城の渡した映像がほぼそのまま使われていた。
「ほう、かなり長く映してくれたね。今後が見ものだぞ」
画面をみながら神城が言うと、鈴和が
「番組が終わったら見に行く人が居るでしょうね?」
そう訊くと、英梨も
「それやいますよ!わたしだったら行っちゃいますもん」
笑いながら言うと神城が
「ほら、見てご覧!もう見に行く人がいるよ」
そう言って窓の外を指刺す。鈴和と英梨もその方向を確認すると
「わあ、いるいる!ゾロゾロ行く!」
英梨が興奮しながら見ている。
鈴和も、ひょっとしたら、思ったより騒ぎは大きくなるかも知れない、と思うのだった。

翌日からマンションの工事現場は一種の観光地と化してしまった。
夜になると各地からお化け見たさにやって来るのだ。
鈴和は工事現場の霊達に、人が大勢居る時は出ない事。人が少ない時に出る事。
兎に角、やたら出ない様に言い含めるのだった。
その内に段々噂は広まり、マックスも傍観出来なくなって来て、ガードマンを雇って
見物人を排除し始めた。
その為、見に来た者と軋轢が生じ始めた。
ここまでは、神城の描いた予想通りとなっている。
あとは、何時マックスに乗りこむかだけだ。
「焦る事はない」
そう思って、三人はホテルで夏休みの課題をやっていたり、それこそ新世界に串かつを食べに行ったり、異人館見物に行ったりしていた。
鈴和は異人館がとても気に行った様で
「また来たい!」と口に出していた。

騒ぎがかなり大きくなり、マックスでも困っている頃とみた神城は
大阪市中央区にあるマックスの関西本部が入っているビルの前に居た。
このビルも当然M不動産所有のビルである。
このビルの3~4階を使用しているみたいだ。
神城はエレベーターを3階で降りて、受付に名刺を出す。
神城のきょうの姿はビシッとしたスーツ姿で名刺には「霊能者」と肩書が書いてあり、
「除霊受付ます」と書かれてあった。
当然、神城は能力を使っていて、その結界に入った者には神城は、如何にも霊能者と思わせる貫録をしており、信用に値する雰囲気を漂わせていた。
名刺と神城を見た受付嬢は「少々お待ち下さい」と言って奥に消えて行った。

神城の名刺を見たのは、マックスの建築課の課長、石野だった。
「くそ、この事は親会社のM不動産がTV局に圧力をかけて、話題にしない様にしていたんだが、
あそこが放送しやがったからなあ……あそことはM不動産とあまりCMの取引が無かったからな」
石野がそう呟いて考えていると、横に居た若手が
「自分が出て対応しましょうか?」
そう言うので石野も「そうだな、取り敢えずそうして貰ってその間にMI不動産に連絡入れるわ」
そう言うやりとりがあり、応接室に案内された神城の前にその若手が出て来た。
「どういうご用件でしょうか?」
しらばっくれて訊くしか無いのだが、若手はその霊能者が、あまりにも立派なので気後れしてしまった。神城は「最初は若手か」と思ったが、そこはボロを出さず。
「実はおたくが建築中の「伊丹パークホームズ」ですが、最近あそこに霊が出ると言う事らしいですね。お困りじゃ無いんですか? よろしければ私どもは除霊やその他霊障を除外する仕事を請け負っております」
とそう述べて相手の反応を伺う。
若手社員は「これは本物だ!」と思い、焦って
「少々お待ち下さい」と言ってまたまた奥に行ってしまった。
「慌ててるか……面白くなって来たな」
そうほくそ笑んでると、今度は課長の石野が出て来た。
「お待たせ致しました。建築課、課長の石野です。伊丹は私が責任者をさせて戴いております」
そう言って名刺を出した。
神城は、先ほどと同じ文言を繰り返して石野の出方を伺うと石野は
「幽霊が出るなんと言うのは単なる噂に過ぎません。TV局にも困った事で現在法的手段に訴える事も検討中です。そう言う訳ですので、大変有りがたいお話ですが……」
そこまで言った時に神城は
「これをご覧になってから、検討して戴きたいのですが」
そう言って、工事現場で鈴和と英梨が撮影した動画をノートパソコンで見せ始めた。
それは、被害者がマックスの手口を話してる動画で、TVで放送されたものでは無かった。
「こ、これは……」
石野は、余りの衝撃的な映像に激しいショックを受けた。
「私は霊能者です、霊と何とでもコミュケーションを取る事が出来ます」
神城はそう石野に言うと、パソコンからDVDを抜き出して
「この映像は差し上げましょう。よ~く検討して戴きたいですからね。いいお返事待っています」
そう言って神城は席を立つて帰ろうとする。
石野は慌てて取りすがる
「ちょっと待って下さい。今親会社と調整中ですから」
「ふん、そうかM不動産に報告済みか、若しかしたらこの様子も監視カメラで撮影されてるな。だが大丈夫だ僕の能力はそんなものでは見破る事は出来ない。
この現場そのものが僕の結界なのだ。その結界の中にあるものは全て自分の思い通りの制御が出来る。つまり撮影された映像は僕の思っている映像が記録されるのだ。僕の本当の能力は「錯覚」では無い、自分の結界の中の完全な支配さ。つまり能力「支配」なんだ。
これはボスとマザーしか知らない。僕の恩人の二人しか……」
神城はそう思っていたが、拉致があかないと思い
「また、おじゃましますから、その時に良いお返事を期待しています」
そう言い残してその場を後にした。

残された石野と若手社員は
「どうしますか?……」
そう言う若手社員の言葉に石野は
「業務解決コンサルタントに連絡して、あの御仁を事故にあわせろ!」
そう指示をした。
「こう言う場合に始末してくれる為に高い金を払っているのだから」
石野は裏の世界で始末を付ける事を選択した様である。
「判りました。すぐに連絡します」
若手社員はそう言いって自分の机の上にある電話で、そのコンサルタントに連絡をした。
「課長、これからこちらに来るそうです」
「そうか、今に見てろよ、クソ霊能者め……」
石野は不敵に笑うのだった。

「超能力高校生はパフェがお好き」 第15話

第15話 「死闘再び」

「先程の映像は夕方のニュースの話題のコーナーで放送されるらしい。時間は6時台だそうだ」
そう神城が言うと英梨は
「じゃあ、それまで暇ですよね。新世界にでも行って何か美味しいものでも食べましょうよ」
そう言って神城に甘えて食い下がる。
「新世界? なんでまた……」
「そこが美味しいもの沢山あるそうなんです」
「新世界って確か……串かつが有名だっけ?」
そう神城が言うと英梨は興奮状態になって
「そうです!美味しいんですよ串かつ。いきましょう~よ。ねえ!」
そう言って増々甘えて来る。
「仕方無いな、夕方までは特に用も無いしね」
神城が折れると英梨の喜びはすさまじいものがあった。
子犬が喜ぶと言うのはこのような状態を言うのかと鈴和は思った。そしてつぶやく様に
「私は行かない。部屋で休んでる。昨夜ずっと能力使っていたから、休んでおくわ。だから英梨私の分も食べて来て」
鈴和はそう言ってロビーのソファに体を沈めた。
心なし顔色も良くない様だ。
「鈴和さん……そんなに疲れていたんですか? 私知りませんでした。すいません……」
英梨がそう言って詫びると鈴和は
「何で英梨が謝るの!それに神城先輩となら、私が行かない方が良いでしょう!いいのよ。
夕方迄休んでいれば元に戻るから」
そう言って笑っている。
「すいません。じゃあお言葉に甘えます」
「そ言う事なら、僕達二人で行ってくるから、ちゃんと休んでるんだよ!」
神城もそう言って、二人は新世界へと行ってしまった。


二人の気が全く感じ無くなると鈴和はホテルを出て、駅とは反対の方向へ歩いて行く。
そして人気の無い公園に来ると
「もうそろそろ姿を表したらどうなの、サツキ!」
鈴和はかってヒロポン事件で死闘を繰り広げた相手の名を呼んだ。
すると公園の木の影から、かっての異世界から来た能力者サツキが姿を表した
「やはり判っていたのかい、それで関係無い人物を逃したのか……まあいい、残りはお前を殺した後にゆっくりとやらして貰うから」
そう言って黒ずくめの姿を表した。
「お前にやられて関西に移動になって、当分復讐の機会は無いかと思っていたんだけどね。
こりゃ神様が機会を与えてくだすったと思って、この際死んで貰うから」
そう言うと両手に気の円盤状の形をつくり、物凄い勢いで回転させ始めた。
「この気の円盤を見たかい。これでお前の頭を切り刻んでやる」
そう言うと回転させていた円盤を鈴和に向かって投げつける。
音も無く物凄い勢いで回転して来た円盤は避けた鈴和の脇をかすめて、後ろの木を傷つけ、
Uターンして戻って来る。
どうやら、完全に制御出来る様になったみたいだ。
「不味いな」
鈴和は短くつぶやくと、なるべくサツキの目標にならない様に移動して行く。
「くそ!あいつ能力上がってるじゃん!まずいよ」
そうつぶやきながら鈴和はサツキ目掛けて気の弾を数発投げつける。
サツキはそれらを全て円盤で砕いて行く
「もうそんなへなちょこな弾は通用しないからね。今度こそ死んで貰うよ」
そう言ったかと思うと今度は両方の手で廻っていた円盤を同時に投げつけた。
一枚をかわした時、もう一枚がその避けて行った方にやって来る。
それもかわした積りだったが、かわしきれずに風で膨らんだブラウスの端をきって行く。
体は何とか大丈夫だったと思った瞬間にもう一枚が脇腹をかすめて行く
「痛!」
脇腹を抑えると痛みを感じる。
どうやら、気で一応体を覆ってるので直接の傷は無いものの、体の内側にダメージを貰ってしまった様だ。きっとアザになってると思う。
「くそ!どうするかなぁ、昨日能力使って疲れてるから、不利だよね。きっと今までこのチャンスを狙っていたんだろうな」
そう言って、サツキからは直接見えない公園のモニュメントの影に身を隠して様子を見る。
段々と脇腹が痛くなって来る。
「不味いな、早く決着つけなくちゃ」
鈴和は気を刀の形にして構える。
この刀でサツキの円盤を切り刻む積りだ。硬く作られた方が相手を負かす事が出来る。
鈴和は気を充実させ、作り上げた刀を硬くしていく。
そして、モニュメントから飛び出しサツキに向かっていく。
体力が無い今、長期戦は不利と考えて、一気に勝負に出たのだ。
「ふん!来たね。切り刻んでやるよ」
そう言ってサツキは二枚の円盤を時間差で投げつけて来る。
鈴和はまず、最初の一枚を「エイッ!」と気合もろとも真っ二つにする。
その瞬間に円盤は消えて無くなる。
そして、遅れて襲って来た二枚目に切り込むと
切り込んだ感覚があった瞬間に刀も円盤も同時に消えて無くなった。
”おあいこ”になったのだ。

鈴和がほっとした瞬間、サツキの気の紐が飛んで来て鈴和の両足に巻き付く。
もんどり打って倒れる鈴和
「ふん、疲れているあんたの気はあの刀でもう終わりだろう! だが、あたしは違う。未だ未だお前を殺す気はたっぷりとあるからな」
そう言うと今度はサツキが気で刀を出して、鈴和に見せる。
「これで、一気に殺す!」
そう言うと鈴和目掛けて突き刺す!
鈴和は身を避けて僅かにかわす。
「ほう、かわしたか、じゃあ今度はあの世に送ってやるよ」
鈴和は、この時覚悟をした。
気で動きを制限されているので、テレポートも出来ない。
サツキがその気になれば、自分の動きも止める事が出来るのだ。
「お父さん、お母さん、御免なさい! 康子元気でね!」
そう心の中で想い覚悟をする。
「ふん、大人なしくなったかい、じゃあ楽にさせてやるよ」
そう言ったかと思うと気の刀を鈴和目掛けて振り下ろした。

「超能力高校生はパフェがお好き」 第14話

 第13話 「神城の能力」

 鈴和は英梨のカーテンを開ける音で目が覚めた。
ぼんやりと見ると、英梨が窓から外を興味深そうな目で見ている。
「どうしたの?」
良く頭がまわらない状態で英梨に話し掛けると
「今日、TVとか取材に来ますかねえ?」
そう言って期待した顔をしている。
「さあ、判らないけど、神城先輩の話だと来る様な事だったから、来ると思うわよ。それに騒動になってくれないと、私達もこれから困るでしょう」
そう言う鈴和の言葉に英梨は
「そうですよねえ。楽しみです」
そう言ってニヤついている。
「それよりも、夕べはあれから動画の編集したから眠いわ」
そう言ってあくびをすると英梨は
「何言ってるんですか、編集したのは私と神城さんで、鈴和さんは帰りにコンビニで買って来たデザートを食べていたじゃ無いですか」
そう言ってちょっとむくれると鈴和は
「あら、二人だけの方が楽しいと思って私は遠慮していたのよ。昨日だって編集点見つける為にマウスを動かしていたら、あなたが上手く見つけられないので、 神城先輩が貴方がマウス握ってる上から触って動かしていたじゃ無い。それに手なんか握りあってりして。ちゃんと見ていたのよ」
鈴和は呆れながらもしっかりとその点を言うのだ。
「えへへ、見ていました!? たくさん神城さんの手を握って仕舞いました」
そう言いながらウットリと自分の手を眺めている。
「神城さんやはり素敵ですよね」
その英梨の言葉に鈴和は
「でもさあ、神城先輩の能力が「錯覚」なら私達が見ている神城先輩の姿も錯覚なのかも知れないと考えた事無いの?」
それを聞いた英梨の表情は見ものだった。
「え!まさか、それで素敵に見えてるだけなんですか? 本当は変な顔だったりするとか……」
言いながら英梨は半分涙目になっている。それを見て鈴和は
「冗談よ、冗談、そこまで好きなんだ……」
「そうなんです……すいません……」
鈴和はここまでなら程度は康子よりも上かな?と思うのだった。
「私、シャワー浴びるからね」
そう英梨に言って浴室で体を洗っていると、浴室の扉が少し開いて、英梨が覗いている。
「こら!何見てんの? あなた神城先輩が好きな癖にそっちの気もあるの?」
そう鈴和が半分冗談に言うと英梨は
「違いますよ。鈴和さん胸は大きいし、ウエストはくびれてるし、お尻は持ち上がってるし、羨ましいなぁ~と思って見ていたのです」
「なに言ってるの、英梨だってスタイル良いでしょう」
女子二人が他愛ない会話をしていると、ドアをノックする音がする。
英梨がドアの小窓から除くと神城だった。
少しだけドアを開けると神城が
「おはよう、今良いかな?」と様子を伺うので英梨は
「鈴和さんが今シャワー浴びていて……」
そこまで言うと後ろから
「私ならもう出たわよ」
その声に振り向くと、鈴和は素肌にバスタオルを巻いて出て来ていた。
「ちょっ! 鈴和さん、そんな格好で!」
驚く英梨に鈴和は
「大丈夫よ、神城先輩とは、何回も一緒にお風呂に入った仲だから」
そう言って涼しい顔をしている。英梨は
「ええ!二人はそう言う関係だったのですか!わたし知らなかった!」
そう言って今にも泣きだしそうだった。慌てたのが神城で
「違う!違うよ!一緒にお風呂に入っていたのは幼稚園の頃だよ。幼い頃の話さ!」
「ならいいですけど……」
英梨は本当に泣きだしそうな感じになっていた。
英梨の後ろで舌を出して笑ってる鈴和に神城は
「鈴和ちゃんもいい加減にしなさい!」
珍しくキツく言うのだった。
「はあ~い」
鈴和は珍しく素直に笑いながらだが言う事を聞いた。
だが、英梨は本当の神城の事を知ったらどう反応するか、それも気がかりだった。

着替えた鈴和と英梨は神城の部屋に呼ばれていた。
神城がテーブルに昨日英梨と編集した動画が入ったSDカードが並べられている。
「右から順に、昨日の霊の証言から、霊が出て来るシーンも含めた完全版が入っているもの。
次が霊の証言だけが入っているもの。それから一番左が霊が出て来るシーンだけが入ってるものとなっている。それぞれ右から番号が振ってある」
神城が二人に改めて説明をすると、鈴和が
「この3番目の短いシーンだけが入ってるのはマスコミ用?」
そう訊くと神城は
「そうさ、まずはこれをマスコミに手渡して、騒ぎを大きくして貰う。そしてその後マックスと交渉する。これで大人しくこっちの条件を呑めば問題無いがね」
そう言いながらノートPCにSDカードを挿して再生を始める。
画面には如何にもおどろおどろしい感じで暗闇から霊の姿がぼんやりと浮かんでは消えると言う事を繰り返してる。それを見ながら鈴和は
「ほんと、この時演出するのに苦労したのよね。みんな慣れて無いからいきなりパッと出るのよね。あれだと怖くもなんとも無いからさあ」
英梨も思い出したのか、笑い出した。
「霊魂って本当は怖く無いんですね。わたし初めて知りました」
「あら、英梨は今まで恐いと思っていたの?」
そう訊く鈴和に英梨は
「そりゃあそうですよ。お化けとか幽霊って恐いって相場が決まってます」

「先輩、この映像は何時渡すのですか?」
鈴和の質問に神城は
「うん、今日の午前11にここのホテルのロビーで会う事になっているんだ」
そう言って腕時計を見る。
「そろそろいいかな? じゃあ僕はマスコミの人と会って来るから、後をついて来ちゃイケナイよ。僕は能力を使うからね」
それを聞いて、二人は遠くからでも見たいと思ってしまった。
「じゃあ遠くからだよ、半径10m以内には入らない事いいね!」
「はあ~い」
二人は神城の能力を見る事が出来る様になった。

鈴和と英梨は神城が部屋を出てから3分ほど遅れて後を追った。
ロビーの端のテーブルと椅子のある場所に既に神城は座っていた。
手にはノートPCがある。
相手はTV局のディレクターとプロデューサーと思わしき男女二人連れで、見た感じでは女性がディレクターと言う感じだ。
神城は何やら名刺を渡している。
それを見た二人は感激した感じにも見える表情をしていた。
やがて神城がPCの映像を二人に見せ始める。
さっき鈴和と英梨が見た昨日編集した映像だ。
その映像を見た二人は興奮している。
明らかに顔が上気していろのが鈴和と英梨の場所からでも良く判る。
神城がSDカードを抜いて二人に渡すと二人は何回も礼を言って帰って行く。
その言葉に「今夜の放送で使わさせて戴きます」と言う文言が聞き取れた。

鈴和と英梨は何が起こったのか全く判らなかった。
なぜ、神城に二人はあんなにペコペコしていたのか……
二人を見送った神城は英梨と鈴和を見つけると、傍に寄って来た。
その瞬間、神城は中年の何か偉そうな人物に変わり、二人に声を掛けた。
「私はこういうものです」そう言って名刺を渡された。
そこには「N◯K放送センター映像エンジニアリング、チーフディレクター 松本弧門」と書かれていた。
「実はですね。あのような映像はウチでは使用出来ませんのでおたくで使えませんかね。映像の他にデーターもその中に入っていますから」
二人はその言葉を聞きながら、渡された名刺を見ていると松本と自己紹介した人物は指をパチンと鳴らした。
その瞬間、二人の目の前には神城が笑って立っていた。
「どうだい、お嬢さん方、僕の能力を理解してくれたかな?」
あっけに取られている二人だが鈴和が先に我に返った。
「凄い能力ね!初めて経験したわ」
その鈴和の言葉で英梨も我に返った。
「神城さん……凄いです!」
その英梨の様子を見て鈴和は、増々神城にのめり込みそうな英梨を心配するのだった。

「まあ、今日の夕方のニュースで放送されるそうだから、楽しみだよ。
種は蒔かれた……これからどう育つかさ!」
神城はそう言って二人にウインクするのだった。

「超能力高校生はパフェがお好き」 第13話

第13話 「恋する串かつ」

 神城が伊丹の鈴和達の泊まってるホテルに着いたのは翌日も日が暮れようとした頃だった。
「先輩遅いですよ!朝のうちに来るかと思っていたのに」
そう鈴和がむくれて言うと神城は
「いやね、今回の事で色々と仕込みがあってね。それで遅くなったんだ」
二人のやりとりを見ていた英梨は
「神城さん!わたし、名古屋の大曽根の佐々木英梨です。以前フォーラムでご一緒させて戴いた者です」
そう自己紹介すると、神城は
「ああ、佐々木さん暫くぶりです。お元気でした?」
「ああ、わたしの事覚えていてくださったのですね。感激です」
英梨は神城のファンだったのか、とその時鈴和は思って心の中で苦笑した。

神城は流石に鈴和と英梨の部屋には行けないので自分でもツインの部屋を取っていた。
「でも私たちの部屋より広い感じ」
部屋の中を見回した鈴和が神城に言うと
「それはそうさ、ここを作戦会議に使うと思ってツインでも広い部屋を取ったのさ」
神城はそう鈴和に説明をすると英梨が
「さすがは神城さんです!」
そう言ってうっとりしている。
鈴和はここに康子がいなくて良かったと思い、英梨と康子は会わせてはならないと思った。

「じゃあ具体的な話に入るよ。こっちに来る前にこのマンションの建設現場に幽霊がでる、と言う情報をマスコミに流しておいた。明日にはきっとTVの取材が入るだろう。そして騒ぎになる」
神城は二人を見ながら更に
「そこで、我々が除霊としてマックスと交渉する。
その時に鈴和ちゃんの力で現場の霊たちにマックスの悪行を話させそれを動画に撮影したものを見せる。そして交渉する」
「なんか、甘くありません?もっとガツンとやりましょうよ」
英梨が興奮状態で神城に迫る。最も違う興奮状態でもあったのだが……

「大丈夫、恐らくそんな事ではあいつ等は引き下がらないだろうから、その動画をマスコミに流して話を一挙に広める。そして、これは最後の作戦だが」
そう言って神城は何枚かの紙を出してみせた。
「これは?」
不思議そうな顔をしている二人を前にして神城は
「これを良く読んでご覧」
言われて見てみるとそこには
「不動産取引……土地の取引の書類だわ!」
驚く英梨に神城は
「そう、僕の能力「錯覚」を使って、マックスを騙す!そして騙された人たちの損害を補填する」
「補填って皆亡くなってるのに……」
そう英梨が言うと神城は
「そこは、慰霊碑を立てても良いし、遺族に返しても良いと思っているんだ」
「でも、そんなにお金あるのかしら?」
鈴和がそう言うと神城はニヤリと笑い
「マックスの親会社はね、M不動産なんだ。マックスの立てたマンションは建築後M不動産が買い取ってるがね、この二つは親と子の関係さ」
「M不動産って言ったら日本でも指折りの会社で、異世界なら志摩さんの関係だわ」
鈴和はそうつぶやく様に言った。
「志摩さんは今回は関係無いけれどね。だから懐具合を心配する事は無いんだよ」
神城はそう言って自信ありげに話すのだった。

「じゃあ鈴和ちゃん、英梨ちゃんと一緒に行って、工事現場の霊たちに今僕が言った事を伝えて、それからさっきの証言を撮影してきて」
神城はそう言って英梨にメガネの形状の物を渡した。
「神城さんこれは……」
困惑する英梨に神城は
「これはね。関西支部に寄って借りて来たんだけれども、このメガネがカメラになっていて、無線でこの媒体に記録される。メガネの縁にボタンがあり、記録が 始まるとグラスにうっすらとRECの文字が浮来でる様になっているんだ。やって見てくれる。そしてもう一度押すと止まると言う仕組みなんだ」
英梨は神城に言われた様にメガネを掛けて記録媒体を手に取る。それはタバコケースより小さく、ピルケースほどだった。
「これはどれぐらい記録出来るんですか?また撮影の出来るバッテリーはどの位なんですか?」
神城は英梨の質問に最もだと思いながら
「記録はHDSDで、早さはCLASS20、要領は2テラバイトだ。ケースにはバッテリーも入っていて連続24時間撮影出来る。但しズーム機能は無い」

英梨はそれだけ訊けば充分だった。
早速セットした道具を使ってみた。
縁のボタンを押すとレンズの部分にRECの文字がうっすらと映る。もう一度押すとそれが消えた。
使いやすいと思ったし、自分の名古屋支部にも欲しいと思った。やはり関西の方が進んでるのかと、その時思っていた。

「じゃあ行ってくるわ」
鈴和はそう言い残して、英梨を伴うとテレポートして姿を消して行った。
残った神城はノートPCを出すとLANに接続して、ネットの色々な掲示板に、マンションの霊の噂を書き込み始めた。マックスのHPにもあること無いことを書き込んでいく。
「さて種は巻かれた。後はどう育つかなだな?」
そう言って楽しそうに笑うのだった。
神城としても、今回能力を本格的に使うのは久しぶりなのだ。余りにも危険なので、普段は組織から使用を制限されている能力で、本気を出せば只の白い紙切れ を1万円札と思い込ませる事も朝飯前で、全く違う人物と思い込ませたり、さらには、そこには居ない人物が居て、しかも会話した様に思い込ませる事すら出来 るのだった。
こんなのを、やたらやられては困るので組織も簡単な錯覚だけに普段は制限していたのだ。
「二人が帰るまで、街中で能力のトレーニングをしてくるかな」
そう言うと神城はやはりテレポートを使って消えて行った。
その晩、伊丹には有名芸能人の誰それが街を歩いていたとか、MLBにいたイチローが亡くなった仰木監督と屋台で一杯飲んでいたとか他愛ない噂が広まっていった。

さて、鈴和と英梨は昨日の霊たちを呼び出して、事情を説明し、神城の計画も話して協力を求めた。
「そんな、我々の為に……こうなったらなにもかも協力します」
「ありがとう!、あ、それから、多分明日からマスコミが来ると思うのだけど、その人達にも多少協力してやってね。そうするとマックスに圧力になるから」
そう鈴和が言うと霊は大層喜んで
「それなら、思いきり脅かしてあげましょう」
となんだか変な方向になって来たと英梨は思いながらしっかりと記録していた。

事情を理解した霊達は、それぞれ自分の事を正直に、多少大げさに語って行った。
すべてが終わった頃には日付が変わろうとしていた。
「お腹減った……」
英梨は心の底、いや腹の底からそう思っていた。
「こんなにお腹減ったら能力も使え無いよ……」
帰り道英梨は鈴和に
「何処かで何か食べて帰りましょうよ。もうお腹減って……」
「そうねえ、私もパフェが食べたいから、ファミレスでも寄りましょうか?」
「ええ~またファミレスですかぁ~関西ですよ!大阪ですよ!食い倒れですよ!」
「そうは言っても、この時間でやってる店は……」
そう言って鈴和と英梨が周りを見た処、1件だけ明かりが点いていた。
「あそこ、きっと食べ物屋さんですよ。あそこ入りましょう!」
そう言って英梨は鈴和をグイグイ引っ張って行く。
鈴和はコンビニで何か買って帰る積りだったのだ。
「あそこ、パフェ無いだろうし……」
「今回は私の顔を立てて下さい」
英梨のその一言で鈴和は折れてしまった。
「あ、あそこ串かつ屋さんだ!」
その時の英梨の嬉しそうな顔と声は一生忘れないだろうと鈴和は思うのだった。

「いらっしゃい!」
景気の良い声に迎えられて店内に入ると店は2人ほどが居て、チューハイらしきものを飲んでいた。
二人はカウンターに腰掛けると英梨が「何飲みます?」と訊いて来る
「何って私達未成年よ。烏龍茶でしよう」
英梨は何かを期待していた様だが
「おじさん!盛り合わせを二人分揚げて下さい。それとウーロン茶二つ!」
二人のやりとりを訊いた店主は笑っていたが
「なんだい、若い子がウチみたいな店に来るなんて、それもこんな時間に、なんか悪い事していた遅くなったのかい?」
そう訊かれたので英梨と鈴和はこれは使えると思った。
「そうなんです。この先のマンションの建設現場ありますよね? あそこで私達、お化けを見たんです! 怖かった~」
英梨が芝居毛たっぷりに言うのに店に居た二人の男は
「やっぱり出たのかいお嬢ちゃん! 俺もねえこの前なんか変な感じがしたんだよ! こりゃ大変だ!みんなに教えなくちゃ!」
二人はそう言って勘定を払うと外に出て行った。
それを見た店主は
「あ~あ、あの二人はこの辺じゃ噂をまき散らす存在として知られているんだ。きっと伊丹中に明日には広まるぞ」
そう言って笑ってる。

鈴和が店内を見ると「二度漬け禁止」とか「当店は、素材、油、衣、等吟味しておりますので、胸焼けなどは一切心配の程はございません」とか色々と書いてある。
「おじさん、二度漬けって、一度かじった串かつをソースに漬けたら駄目と言う事だよね?」
英梨がそう訊くと店主は「それはね、大阪で、いや日本中で串かつを食べる時にやってはイケナイ事なんだよ」
そう言って説明してくれた。
鈴和は、そういえば東京でもあちこちにこういう店があったと思いだした。
「お待ちどう様」
そう言いながら一本ずつ点店主が目の前に揚げてくれる。
二人はそれを手に取り、ソーズに漬けて口の中に入れて噛み締めてみる。
ソースの甘辛い味と衣から出て来る肉汁の旨み、それが渾然一体となって鈴和の味覚を襲って来る。また、カラット揚がった衣もそれを引き立てるのだった。
「美味しい!」
思わず笑顔になる。隣の英梨を見ると笑う様な泣くような顔で食べている。
「おじさん、美味しい!」
鈴和の呼びかけに店主は親指を立てて前に出すのだった。

満足しての帰り道、英梨は
「ウチの傍の守山自衛隊の傍にも美味しい串かつ屋さんがあるんですよ。店売りもしていて、小学校の時に塾とかの帰りに何本か買って食べながら帰った事を思い出しました」
それを聴きながら、鈴和はちょっとそれは羨ましいと思うのだった。

「短編」139期 感想を書いてみました

今日は私が参加している「短編」の感想を書いてみたいと思います。
「短編」とは毎月1000字以内で作品を募集して投票によって優劣を決めるサイトです。
私もここの処、毎月参加しています。殆んど予選落ちですが一度だけ同時優勝させて戴きました。
今期のエントリー作品に短い感想を書いてみました。

#1  「 父にそして母に」  自作なのでパス

#2 「ホワイト・デーにて」 ホワイトデーに告白しようとして失恋した少女の話。後半の授業のシーンがくどい感
じがして、ちょっと「頭でっかち」な感じ。でもあそこでは結構票が入るかも?

#3 「享受」 味噌汁に入れた馬鈴薯を通して別れた妻の事を思い、娘の将来を見据える話。正直こう言う話は好きです。でもこう言う人情噺はあそこでは受けないんだよね……

#4 「面接官雑談中(石編)」 石の面接という設定だがもちろんこれは人間の比喩なのだが、こう言う技巧派があそこでは、受けると思う。煙草の話は本物か偽物かという事。

#5 「ともこ2」 祖父の葬式の時の話、長い小説の一部を切り取って来た様な印象。こう言うのも受ける。私は頭が悪いので、真意を理解するのに時間が掛かる。要するに祖父への想いなのか何なのか良く判らない。という事

#6 「 旺知大学経済学部一般入学試験合否通知」 大学からの不合格の通知を貰った主人公の想い。最後のセリフが幾重にも意味が重なって来る構成。ま、オチですね。悪く無いと思います。

#7 「ばいばい」 人間関係の事を判っている様で全く判っていない男の話。それだけ、最後の捻りも予見出来るから思ったほど凝ってない。

#8 「少年ピラニア」 なかなかハードな展開で、周りの友人らしき人物が皆、悪魔みたいな存在だったと言う話。技巧的に凝っているのだろうけど、個人的にレイプは嫌い。

#9 「中身よ、吠えろ」 この人の書く話はいつも独特の世界。ハマるともの凄いが外すと目も当てられない。で、今回は大当たり! いいですよ! こう言うの好き!

#10 「」 亡くなった漁師さんの話。亡くなった友人のために、苦労して鮪を採って来て霊前に供えたと言う話。それ以上でも以下でも無い。

#11 「旅の終わりと始まり」 人の生まれ変わりについての比喩がてんこ盛りの話かと思いきや、最後が単純
で、しかもグロ? なので後味が良く無い。あまり小難しいのを書かれても頭が悪いから理解出来ないですね。

 という訳で今期のエントリーは以上です。投票は誰でも出来ます。酔狂な方は今月30日迄ですので投票してみてください。
 私は、#9「中身よ吠えろ」 なゆら。さんの作品が好きですね。でも私が好きな作品は一度として予選を通った事が無いので、多分……

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